第十一歩
「で、どこへ行こうってんだ三河?」
座席を4人テーブルから6人テーブルへと並べ替え、笹島さんの横に治村さんが座り、千賀君が伊良湖委員長の隣へ。海道君は最初に治村さんがしていたと同じく、彼女と千賀君の向かい合った机横へ席を設けた。
「急な話で申し訳ないんだけれど、みんな今週の土日空いてる? 知り合いが隣のお茶県にある高原へ行くっつーんで、便乗させて貰おうと思ってさ。キャンプと言っても泊まるのはバンガローだから着替えだけ持って来ればいいよ」
これまた急な話だが、友達の極端に少ない僕が予定などあろうはずもない。となれば参加待ったなしだ。それになにより女性と一緒にお泊りだなんて、断る理由などあるわけなかろうに。
「マジ? 俺今週ダメなんだよ。親父が街のイベントへテナント出店するから手伝わなきゃ……。他の日にならねぇの?」
「それがダメなんだよ東。知り合いに便乗寄生するんだから参加か中止の二択あるのみなんだなー。残念だったね」
「くぅー、ムカつくけど手伝いをキャンセルするワケにもいかないんだなこれが! 悔しいから木頃にこの話をしないでおこう。アイツも道連れだわ!」
どうやら海道君は来られないらしい。そりゃ急に話を持ってこられれば当然彼のような予定ある者もいるだろう。
「私も無理。従妹の結婚式があるの」
「メーは東が来ないから当然だろうね」
「違うわ! 本当に無理なのよ! だから伊歩もこんなヤツの……」
あれれ?
なんだか雲行きが怪しいぞ?
治村さんに続いてもしかすると笹島さんまで行かないとか言い出しかねないぞ?
「ごめん芽衣ちゃん。私は別段予定とかないから参加するつもり」
神は我々を見放していなかった。そう思ったのは僕だけと違うだろう。
ね、千賀君!
「俺も行っていいの三河? まだ顔を合わせて間もないのに」
「イケメンも一緒の班になるんでしょ? だったら別に問題ないじゃん。これは親交を深めるのが目的だからね」
「イケメンて!」
結局参加するのは男子が僕と千賀君、女子は伊良湖委員長にクレオパトラ笹島さんとなった。となれば、きっと週末まで眠れぬ夜が続くだろう。勿論嬉しすぎて!
「ところで三河君、私達はどこへ集まればいいんですか?」
そうだ。喜ぶあまり、肝心なことを何一つ聞いていないし決めてもいない。危なく置いてけぼりを喰らう所であった。
「各々の家へ迎えに行くよ。学校へ集まるとマズいんでね。だから後で住所と電話番号教えてねー」
学校だとなにがマズイのであろうか?
校則で禁止されているハズもなかろうし。
「あー、確かになー。魑魅魍魎がワラワラと集まってきそうだもんなー。それに車だすのはあの人だろ三河? だったら例の大学生も一緒に来るんと違うか?」
海道君も一緒となる人物を知っているようだ。それに学校へ集まる危なさも理解しているみたい。
「あ、それは大丈夫だよ。核弾頭も一緒に積んでいくから。いざとなったらアイツを犠牲にして……」
なにやら恐ろしい話へと変わってきたぞ。核弾頭ってなに? 犠牲にされるアイツって誰?
「それに車を運転できる保護者と思しき人物が一緒だからきっと親御さんの許可も得やすいと思うんだよねー。特に美咲っちなんて過保護そうだし」
「……そうかもですハイ」
まるで伊良湖委員長の身辺調査をしたかの如く家庭内の事情を知り得るこの三河って男が心底恐ろしい。そしていとも簡単に彼女は疎か、憧れの笹島さんの住所、剰え電話番号までも手にしてしまう彼の手腕に只々開いた口がふさがらなかった僕であった。
三河君よ、本当に何者なんだユーは!?
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