第6話


 異世界に転移して三日目の朝。

 あ、部屋に戻った後すぐに寝ました。なので、三日目です。


 時計を見てみると、九時ちょっと過ぎていた。

 ま、過ぎていたからといって何かをするわけでもないから、焦ることもない。

 水で顔を綺麗に洗った僕はベッドで横になりながら、ある事を考えていた。


 「異世界といえば、魔法なんだよなぁー」


 そう、魔法が使いたくなってきたのである。

 だが使い方がわからない。


 「どうすればいいんだろ」


 昨日書庫でクリエイトしたラノベを読みながら、そう口にした。


 そもそも魔法とは、スキルと違うものだろう。仮説だが。

 そこで俺は魔法に関する知識ーー現在読んでいる魔法関する一文を見てみる。


 『魔法、それは己の魔力から具現化することの出来るものである』


 ということはだ、このラノベに書いてある魔法もしくは、火の魔法を使いたかったのならファイアとか、そんな感じ英語的なものを口に出せば、異世界に来たばかりの僕でも簡単に魔法を使える、はずだ。

 そういうことなので、早速……。

 いや、待てよ……スキルに『威力調整』ってのなあったよな?

 そんな事を思い出した僕は、もしも一発目から魔法が使えたときのことを考えて、先の行動をすることにした。

 そして威力調整を使う。


 すると頭の中に、


ーーーーーー

 『威力調整』 現在の威力、100%《パーセント》

ーーーーーー


 それが浮かんだ。


 僕はそれを調整して、1%に変更する。


 「よし。これで大丈夫かな」


 というわけで……改めて、魔法を使うことにする。いや、使うというよりも、どんな言葉で使えるかどうかを探すのか……?

 まあ、どっちでもいいか。


 「まずは、んーーー」


 火よりも、水にしておくか。

 威力調整1%にしたのだが、火の魔法を使って火事にでもなったら僕のこれからの人生が危うくなっちゃう。


 「んー……水だから、Water《ウォーター》」


 右手を前にスパッと差し出すとーーそこから魔法陣のようなものが現れて、壁に向かって水の塊のようなものが飛んでいった。

 ただ、威力が100分の1にしているはずなのだが、勢いが思ってたよりも……ある……!

  

 「ウォーター、は成功だな」


 まさか魔法を使うのがここまで簡単にいけるとは思ってもなかった。

 だから……凄く暇になって……しまった。

 部屋に用意されているタオルで壁と床に着いたり落ちている水を拭き取ると、ベッドに座った。


 「そういえば、ここに来てから動いてないせいか体が鈍ってるような」


 そのままベッドに落ちたようにして横なると、そう口にした。

 鈍った体を動かすにしろ、どこで動かすかが問題である。

 迂闊に外に出て動いてたりでもしてたら、見つかった時に何か言われそうだ。

 それにこの部屋でするのは、なんか嫌だ。これに関してはなんとなくだ、ほんとに。


 「んー、あの辺でいいか」


 部屋にある窓から外を確認して、体を動かそうな場所を確認する。

 ちょうどいい場所があったので、僕はそのちょうどいい場所に向かって転移した。無音行動、っていう普通ノーマルスキルがあったんだけど、使わなかった。帰りにでも使ってみようと思う。


 「よし、やるとするか」


 人が来ない間に体をどうにかしなくてはならない。

 まあ、バレなければどうとでもなるのだが、正直なところバレたくない。バレた後がめんどくさそうだし。

 その前に、体を動かすことにはなったのだが、魔法以外することがない。


 「どうしよう」


 目の前に建て付けてある藁の的を見ながら、呟く。


 体を動かすといえば運動なのだが、この世界では運動という存在はあるのだろうか……?

 しばらく考えた後、この前の事をおもいだす。

 それはーークラスメイトの一人が、剣を持って的を斬っていたことだ。


 ということは、僕もそれと同じようなことをすればいいということになる。

 早速俺は、クリエイトで剣を創る。


 「やるか」


 といっても、剣を持つのなんてこれが初めてなので、どういう感じで剣を振るのかなんてこれっぽっちも知らない。

 まあ、剣を振っておけばいいのかもしれない。


 的の前に立った俺は、剣をしっかり握ると、上から下へと斜めに斬った。


 すると、バシュッという音が鳴った。


 ただ、剣は包丁のように滑らかに斬れやすい、という感じにはなっていなかったので藁の的の一部の藁が抜け落ちた。


 なのだが、


 「ん?」


 初めて剣を握って振った割には、凄く滑らかに振ることが出来てしまった。

 理由がわからん。初めて握ったはずなのに。


 「どうしてだ?」


 そういえば、固有ユニークスキルにjobマスターってのがあったよな。

 ということはだ。jobということは、剣を握るってことは、jobになるのではないのだろうか。

 魔法を使うんだったら魔法使いとか、剣を使うんだったら剣士とか、異世界ならその考えならあり得るだろう。

 考えをまとめた結果、jobマスターがあるおかげで簡単に振ることが出来た、ということになった。


 「なんかやってみたいな」


 頭の中に浮かぶ、ある剣の振り方。それをやりたくなってしまった。


 俺は腰を低くして構える。

 どういった感じになるかは、不明だが、出来たら良いなって感じである。

 とりあえず、動きながら斬る。みたいな感じ。


 「ふっ! はっ! とりゃぁっ!」


 声が出てきたのは、まあ、声を出した方が上手くいくっていう言葉があるから、出した。


 「おぉぉ!」


 初めの場所と最後の場所が変わっており、動いている時と斬った時の二つの感覚を体が覚えていたので、俺はそんな声を漏らした。

 藁の的を見てみると、五つ程の斬られただろうという傷みたいなものが出来上がっていた。


 「さすが異世界だな」


 剣を初めて振って、こんなことが出来るとは思ってもいなかったので、凄く興奮してしまう。


 「いやぁー、なんか、俺たち強くなってるって感じするよなぁー」

 「たぶんな」

 「よし、訓練するかー!」


 すると、そんな三人の男の声が俺の耳に聞こえてきた。


 「やば」


 そこから俺はすぐに転移して、この場から消えた。

 その後部屋に戻ってきた俺は、クリエイトで創った剣を光の粒子に戻した。


 「ふぅー。なんというか、動いた感じがしない」


 そう思いつつ、俺はベッドに横になるのであった。

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めんどくさがりなjobマスター 霧羽夜羽 @arukana2002

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