第5話
――ズキン
そんな痛みが頭で響き、僕は眠たい瞼を開く。そして重い体をどうにか動かしてベッドから這い出て立ちあがる。
「はうぅ~~」
僕は口を開き大きな欠伸をする。
そういえば、今は何時なんだろう?
そう思った僕は……時計がないことに気が付いた。
まあ、当然の事だろう。そう思いながら僕は部屋を見渡す。
すると、不自然なところに置いてある白い時計を見つけた。
『12:30』
白い時計は、ちょうど昼を指しており、
――ぐうぅ~~
お腹が減って、僕のお腹はそんな音を立てた。というか、すでにお腹の減り具合限界まで来ていた。
しかし、困ったことに、
「僕って、食事をする場所が城内のどこにあるか知らないんだよなー」
二十四時間まるまる使って寝てしまったせいか、昨日はこの場所から一切動いていない。
ん? なんで24時間も寝たのかって?それは、異世界召喚される前に一週間眠らずにラノベを読んでいたのが原因だろう。っま、仮眠をしながら一週間過ごしたからそんなにきついというわけではない。
僕はお腹がすいた腹を手で抱えながら部屋の扉を開き、出た。
めんどくさいが昼飯を食べないと僕が死ぬからなー。
そして僕は左右を確認すると、そう思いながら昨日とは逆の道を歩いて行くことにした。
歩き始めてからどれくらいの時間が経っただろうか。
そう思いながら僕はまだ歩いていた。
何故僕がまだ歩いているのかというと、今の今まで城内の人と一切会ってないからである。それと、この城の規模が大きすぎるという理由もあるかもしれない。
『真冬のバカ』
そこで脳内にシイの声が響いた。
僕は反射的に脳内で、
『なんで僕がバカなの?』
と、そう聞いていた。
すると、
『普通ノーマルスキルに『探知』と『縮地』があるでしょ。それ使えばすぐに昼ごはんが食べられるんだよ。だから、そんなことに気が付かなかった真冬はバカなんだよ』
と、そんな言葉が脳内に返ってきた。
そこで僕は気が付いた。自分が今は異世界にいるということに。
というわけで、普通スキル『探知』と『縮地』を使ってみることにした。
途端、脳内に大きなマップのようなものが見えた。それにある場所だけ赤い点滅がある。
それを僕は、自分がいる場所を示しているのでは?そう思い今いる場所から少し動いてみることにする。
すると、予想は的中したのか赤い点滅は先程の場所から動いた。
それから次に僕は、脳内に見えているある一つの部屋に向かうため普通スキル『縮地』を使うことにする。
瞬間今まで僕の目が見ていた景色が変わる。そして脳内にある『探知』を使った際に見えたマップに映る赤い点滅はもの凄い距離を移動していた。
うおぉー。
僕は、初めて使ったスキルに歓喜の声(活気無し)を上げもう一度『縮地』を使った。
そしてまたしても先程と同じように縮地が出来ていた。
脳内に見える『探知』のマップに映る赤い点滅はまた移動をしており、その近くに大きめの部屋のような影が見える。
というわけで、僕は『縮地』を使いその部屋の目の前まで移動をする。
そして目の前に、木で作られたドアが現れた。
僕は脳内に見えるマップで位置を確認する。
ちゃんと行けたみたいだな。
そう思った僕は中に入るためにドアをノックした。そしてドアを開け、中に入る。
まず、視界に入ってきたのは、大量に並べてある長テーブルだった。そして次に、長テーブルと同じような数の椅子。
僕はお腹がすいているからか、
「すみませーん。誰かいませんか?」
いつの間にかそう口にしていた。
「(……)」
だが、僕の声に反応することが無く帰っていたのは静かな部屋、そんな感じだった。
「んー、ここは違うのかな?」
そう言って僕はドアを閉める。
そして『探知』で脳内に見えているマップを見て再び違う部屋に向けて『縮地』を使うことにした。
◇
「はぁ~、少し眠くなってきた気が……」
現在の時刻は『14:11』。
昼飯を食べようとしてから何故こんなにも時間が経ってしまっているのかというと、何度も『縮地』を使いご飯を食べる場所を探すのに時間がかかってしまったからである。
まあ、途中クラスメイトの何名かに会ってしまい長い時間は無しを聞かされてしまったのも原因なのだが。それでも最後には昼飯を食べることが出来たから良かったんだけど。
僕は閉じそうになっている瞼をどうにか開き、洗面所に行って顔に大量の水をかける。
冷たい。けど、良い感じになった。
いつもならそのまま眠るのだが、なんでこうしてまで起きようかとしているのかというと……
「あー、ここを出る前にこの世界について徹底的に調べておく必要があるよなー」
そういう事である。
なので僕は再び部屋を出ることにする。そして昼飯を食べる所を探す際途中で見つけた書庫に転移することにした。
先程視界に見えているのは、自室から出てから見える壁。そして今視界に見えているのは、城内にある書庫の部屋だ。
僕はその部屋のドアノブに手をかけ、開く。
すると、視界に映ったのは、大量に並ぶ大きな本棚たちだった。
見た感じだと一万の桁はいってそうだよな。
瞬間そう思った僕は、中に入って行く。
入ってみると、そこには思っていたよりも多くの本があった。というのも、入りきれていない多くの本が床に置かれていたからだ。
僕は足元をしっかりと見ながら一番奥にある大きな本棚の所へ行く。
おおぉ~~。やっぱり、異世界が理由かわからないけど日本の図書館と比較したら差が化け物だな。それに為になりそうな本がたくさんありそうだ。
目的であった本棚の前に着くと僕はそう思った。
それもそうだろう。この本棚は何万冊並べることが出来るんだよっ!と、そう思えるほどの大きさだからだ。
というわけで、まずはこの本棚の本全てを読むとしようかな。
冗談抜きでそう思った僕は手っ取り早く足元近くに並べてあった黒い分厚い本を手に取った。僕はその本の題名を見る。
『彼女の作り方 part.1』
「てっ、おい! 異世界にこんなのあるのかよ! 彼女の作り方ってなんだよ!」
見た瞬間僕はその本に対して総ツッコミを入れ地面にたたきつけそうになり、どうにかたたきつけるのを止め我に返る。
でも、本当にこんな本がここにあっていいのかな?
僕はそう思いながらも手に持っている『彼女の作り方』という題名の本を棚に戻した。だって、今読んでも仕方ないし。というか、今読まなくてもいいし。
気を取り直して、僕は「次はちゃんとしたやつであってくれ」と思いながらその隣に置いてあった黒い分厚い本を手に取る。
「彼女の作り方 part.2って、おい! まさかとは思ってたけどまさか本当にこうなるとは思ってもなかったよ!」
『彼女の作り方 part.1』が来たから予想をしてそれのpart.2を引くのではと思っていた僕は、予想していた通りに『彼女の作り方 part.2』が来たことに声を上げてしまった。
ということは、次も同じのが来る可能性があるかもしれないから……気を付けておこう。
僕はそう思い、再び手に持っている黒い分厚い本を元の位置に戻す。そして隣に置いてある、先程と似たような本を僕は手に取った。
今僕は『この世界と大陸の話』という本を読んでいた。(もうすぐ読み終わるけど)
というか、この本に行きつくまでに、今から生きていくうえで関係のない本をどれくらい引きまくったか。
たしかー、百冊くらいはあったと思う。
って、そんなにいらないだろ!
そんな僕は、思いっきり自分が思った事にツッコミを入れた。
まあ、今はそんなことよりも、ちょうど読み終わった『この世界と大陸の話』について話そうと思う。
まず、シイに聞いた通り、この世界にはシイという神など存在していなかった。というか、この世界はそもそも神が創ったとかそういった話などがなかった。
だから、僕が知りたいことは、知ることが出来なかった。
次に大陸について分かった事なのだが、この世界の大陸は、人間族・魔人族・獣人族・妖精族・エルフ族・ドワーフ族・六族協和国家の七大陸が存在している。他にも未だ見つかっていない大陸もあるのだが、今は分かっている大陸はこのくらいらしい。
まず、人間族は、人間最強や人間一番と考えている種族らしく戦争をやりまくるとか。他にも、他種族を制圧し奴隷にさせるとか。まあ、この話に至っては昔の人間族の考えらしいが、そう考えている人間は昔と比べて少ないが少しはいるらしい。
そして人間族が暮らすこの大陸を《第一大陸》という。
それと、僕が今いる大陸も、この《第一大陸》だ。
次に、魔人族は、人間族と違って戦争をあまりしない。というか、戦争宣言を言われてもほとんど穏便に済ませ、逆にその後は仲良くなるとか。
それに魔人族の大陸には、人間族側の大陸には存在していない珍しい薬草などが生えているらしい。
そして魔人族が暮らす大陸を《第二大陸》という。
次は獣人族。獣人族は、主に野生の動物や魔物を狩ったり動物を飼育したり、森の木の実などを採取して生きている。しかし結構好戦的で獣人族の中ではよく喧嘩が起こる。
獣人族の大陸も魔人族が暮らす《第二大陸》と似ているように、珍しい動物や木の実が存在している。
そして獣人族が暮らす大陸を《第三大陸》という。
そして妖精族。妖精族は、99%の確率で認視することが出来ない。しかし稀にエルフ族の者の中に『精霊魔法』という特殊魔法を使える者が現れる。そもそも精霊とは妖精の親戚みたいなもので、まずは妖精と仲良くなる。すると、精霊が見えるようになり、そこで初めて『精霊魔法』を使うことが出来るのだとか。
だが、この本には正確には書かれてはいなかった。
何故かというと、この本を書いたのが人間族の人であり、その人には『精霊魔法』を使うことすらも出来なかったからだ。
だから僕もあんまり理解できていない。
そして妖精族が暮らす大陸を《第四大陸》という。
次はエルフ族だ。エルフ族は、共通するところと共通しないところが存在している。共通しているところは、耳が長く尖っているところ。そして共通していないところは、肌が白いエルフと肌が黒いエルフが存在していること。
この共通していないところに関しては、特に意味はない。
そしてエルフ族が暮らす大陸を《第五大陸》という。
次は、ドワーフ族。ドワーフ族は、人間族や魔人族よりも背丈が少し小さい種族だ。だが、力に関しては、人間族よりも強い。それに鍛冶関連になると凄い才能があるとか。
そしてドワーフ族が暮らす大陸を《第六大陸》という。
そして最後に、人間族・魔人族・獣人族・妖精族・エルフ族・ドワーフ族の六つの族が共に協力して暮らす《六族協和国家》。
この大陸には、今言ったように六つの違う種族人々が仲良く楽しく協力し合って生活をしている。なので、出来ないことは違う種族の人々に手伝ってもらうというこtが出来るため、この大陸だけが他の大陸よりも生活がしやすい。というか、何事にも巻き込まれることなく生活が出来る。
そしてこの《六族協和国家》を《第七大陸》と言うのだが、他の種族からするとおかしな人たちが集まっているのではという事なので《特殊・第七大陸》と呼んでいるらしい。
僕は読み終わった『この世界と大陸の話』という題名の本を元の位置に戻す。今まで変な体勢で読んでいたため痛くなった体を伸ばした。
「んー、ふと思ったけど、椅子が欲しいな。『クリエイト』で作ってみるか」
早速椅子を作るために僕は『クリエイト』を使って椅子を作る。しっかりしたイメージを持って。
その瞬間、何にもない目の前の空間が輝き始めた。
それからすぐに輝きは収まり、そこには、一つの白い椅子が置いてあった。
「成功だなー」
そう言って僕は椅子に座ると、そこでふと思ってしまった。
あ……椅子じゃなくてソファー作れば良かったかな……。まあ、これもこれでいい感じだし良いか。
僕はそう考えを改めて、深く椅子に座る。
しかし、今、何時なんだろう? あの本の中身結構文字が多かったから長い時間読んでしまったような気がするんだけど……。
そう思いながら、「時計でも作っておけばよかった」と後悔してしまった。
んー、でも時間が気になるな。どうしよう、部屋に戻るか戻らないか。ん?
そう思っていると、そこで、
『『転移』スキルがあるじゃん、真冬』
シイの声がそう教えてくれる。
「あ、そうか! ありがとな、シイ」
僕はシイにそう言って感謝すると、早速『転移』スキルを使うことにした。
途中シイが何かを言ってきたのだが、聞こえなくなったので言うのを止めたのではと、僕は思った。
それと、作った椅子は部屋に持って帰りました。だって、バレたりでもしたらまずいでしょ。
そうして、書庫の部屋には誰もいなくなるのであった。あるのは、たくさんの本棚とたくさんの本だけ。
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