第8話 グルメな昼食ととんでもない会話
「おお、ジル様、今回はご足労頂きありがとうございますわ、ワタクシもお食事を頂きにまいりましたの」
「おお、いま俺が管理してる世界の魚だけど、美味いのを厳選して出したから遠慮なく食ってくれ、食いながら話としようか!」
呆けている僕を無視して樹さんと魔王様が会話を続け、僕の前にホカホカの白ごはんと箸、お茶と小皿が、テーブルの大皿にはたくさんの料理が並んでいた。
「魚の名前は言っても判らんだろうから、見ての通り刺身に焼き魚、煮魚に揚げ物、あとはアラ汁、サラダだな、好きなものを小皿にとって食べてくれ、ごはんも沢山炊いといたからお代わりしてくれよ!」
スーツの上からエプロン姿がなぜか似合う樹さんが小皿の一つに醤油をかけて刺身を食べる。
それを見たあんこが早速焼き魚を一匹そのまま小皿に乗せて食べ始めた。
僕がこの屋敷で働いている子かと勘違いしてしまった魔王様は小魚の揚げ物に塩を振りごはんと一緒に食べ始めた。
「このカリッ!とした食感と骨まで柔らかく食べれるのは良いですわね、ところでジル様、ご足労頂けたという事は、ワタクシの統治にお力添えを頂けるという事で良いのかしら?」
「ああ、ここは他世界だから大したことは出来ないがほんの少しだけ手伝ってやろう、お前がやろうとしているこの世界の文明を復興させ、皆が暮らせる世界にするというのは面白い、他の奴等が統治している場所も色々と見て回る必要があるから長居は出来ないけどな、比呂君、どうした食べないのか?刺身も煮魚もオススメだぞ、特にこの刺身なんかは大トロっぽいのとかさっぱりした白身とかいろいろあるからな!」
この人たちの会話について行けず、あんこを見ると焼き魚を食べ終えて早速次は煮魚と刺身にフォークを伸ばしている、僕もあわてて刺身を数切れ自分の皿に移す。
「ジル様、ありがとうございますわ、これで大幅に復興が進みます、取り敢えずガスはごみを魔力で処理することで作れるところまで行きましたけど、水道の浄化装置と発電がまだまだ不安定ですの、あらホント、この煮魚はお醤油とみりんがほど良くしみ込んでてごはんがすすむ味ですわね!」
「そうだろうな、この世界の魔力も万能エネルギーって訳じゃないから、その辺りは少し
あんこはお茶碗を平然と樹さんに突き出す、この人たちの凄い会話を何も聞いてない、尻尾がぶんぶん振ってるし、ネコ夢中とはこのことか!
「ところで、比呂君がアマイモンに聞きたい話があるそうだぞ?」
突然話を振られ、口に含んでいたアラ汁を吹きそうになるのを何とか堪えて、僕は魔王様に向き直った。
「あ、あの、なぜ世界がこんな感じになったのか、人や動物が変わってしまったのか、教えて貰えないでしょうか・・・」
「自分で調べなさい、と言いたいところだけど折角ここまで来たのですから教えて差し上げますわ、この世界はいま、主神の居ない二つの世界が融合した状態なのです、主神とはその名の通り世界の管理者であり、偉大なる統治者です、通常だと主神が居なくなると他の神が主神になるか、その世界が滅ぶかなのですが、今回は2つの世界の主神が意図して世界の管理を放棄し、あとを神の候補やワタクシのような魔王に委ねるとして管理権限を放棄しました、その結果2つの世界は融合され、人や動物がモンスターと融合したのです、ただ元々ある程度知能を有したモンスターはそのままこの世界に定着しましたが、知能の低いモンスターや意識を持たない力だけの精霊などの存在はこの世界の人々融合しました」
「その結果、僕のクライメイト達は殺し合い、先生みたいにおかしくなった人が出た、という事ですか・・・」
「そうですわね、ワタクシ達ではどうすることも出来なかったわ、力で抑えつけても理性が戻らないものはモンスターとして扱うしか出来ませんでしたの・・・」
辛そうな魔王様の表情を見てると僕も辛くなった。
「いえ、魔王様を責めるとかはそんな気は一切ありません、僕とあんこは魔王様がすぐに統治して農業とかを進めてくれたおかげで1年半生きていけたんです、感謝しています!」
ホッとする表情を浮かべる魔王様、樹さんは何かを考えこんでいる。
「そういってもらえると何よりですわ、ワタクシが居た側の世界は殺伐としてて、皆が生きるために必死でしたの、融合された後、貴方達が居た側の世界の話を聞いて、私が目指す統治が決まったのです、文明と豊かな生活を皆に、電気、ガス、水道にスマホに娯楽、それと貨幣、これを復興して奪い奪われる世界から脱却するのですわ!」
「そうなると、他の領地が狙ってくるぞ、隣の東京あたりかを支配してる人間とか、神奈川、静岡辺り支配している神とかは違う考えだからな」
そうなんだ、やっぱり他の地域を支配してる神様や人がいて、その人たちは魔王様にみたいに優しくはないんだろう、そうなると僕の両親は・・・
僕は食事の手を止めて食堂の天井を見つめる、今までは生活で精一杯だったんで考えてなかったけど、やはり両親の事が気がかりだ・・・
「ん?暗くなってるところ悪いが、いま調べてみたが、比呂君のご両親は健在だぞ、お二人とも西の方にいるからだいぶ遠いけどな」
樹さん、僕のシリアスを返してください・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます