第4話 魔王様の住む町へ
3日かけて配給から少しずつ備蓄をしてその翌日、僕とあんこは住み慣れた町から魔王様の住む旧成田市へ移動を開始した。
幸い道路が整備されてきているので、瓦礫の中を歩くようなことはない、予定ではこのまま北に向かい、旧若葉区から旧八街市、旧富里市を抜けていけば着くはずだ。
本当は自転車で二人乗りで進もうかと考えていたんだけど、人の気配がないところではモンスターが出て危険であり、自転車に乗っていると対応に遅れるかもしれないとリザードマンのカイルさんに教えて貰い、歩いて行く事にしたんだ。
僕は念のため、長い棒に包丁を括り付けて槍のようにした棒を持っている、あんこは素手だけど、手足の爪が武器になるらしい、頼りにしてるよ、僕は闘うなんてできないだろうから・・・
歩きやすいスニーカーを履きあんこと道を進んでいく、このあたりはゴルフ場が多くあったんだけど、全て畑に変わってるみたいで、道すがら覗いてみると、僕達みたいに畑仕事をしてる人が何人もいた。
道の途中で何度も休憩し、歩いているとやはりあの日、かなりの人が減ったんだと実感するくらい人に会わない、ガソリンが無いことで車が走っていないのはしょうがないとしても、歩いている人も殆どいないし、生き残っている人は皆農作業をしているような感じだ。
お金が意味を持たないから商品もないし、お店も空いていない、全て魔王様からの配給で賄っているので、ある意味江戸時代より後退したと言えるかもしれない。
予定では夕方には旧富里市に入る予定だったんだけど、夕方になった今、まだ旧八街市の真ん中あたりだ、念のため家から持ち出した地図と、このあたりの番地を照らし合わせてみたけど間違いない。
「あんこ、そろそろ急がないと、暗くなる前に魔王様の住む町には着けないよ?」
「ヒロ様、あっちに人の住んでない家があるにゃ、中を見てみるにゃ?」
「だから、そういうことをやってるから遅くなるんだよ、ホラ急いで!」
だいたいこんな感じで、あんこはネコマタだからしょうがないのかもしれないけど、小川や廃墟を見るたびに興奮して寄り道をする、そのおかげで予定よりだいぶと遅れてしまっている。
そんなこんなで辺りが暗くなってきたけど、残念な事に人が住んでる気配はない、こうなったら手ごろな廃墟で夜を過ごすしかないかな、ホテルとかマンションとかで空いてるところに入れればいいかもしれない。
「あんこ、これ以上進むのは危ないから、今夜泊まれる場所を探そうよ」
「しょうがないにゃ、じゃああんこが探してあげるからヒロ様は待ってるにゃ」
「いや、僕も探すよ、一緒に探そう」
スマホなんて使えない状態なので、暗くなってきた今、離れて行動するのは危険だ、なので一緒に探すことにする、この辺りは高い建物も少なく、民家も数件しかないみたいだ、人の気配がないのでほぼ廃墟なんだけど、中に入ると床や壁に血の染みらしいものが変色してこびりついていた、世の中が変わったあの日、我を忘れて変異してしまった人たちが暴れたんだろう、流石にこんなところじゃ寝れないし、家の中も草が生えてたりと外と変わらない感じなっている。
何とかいろいろと歩き回り、僕達は神社を見つけた、たまに誰かが掃除しているみたいで、人の気配がないわりに綺麗だ、申し訳ないけど今晩はここで寝させてもらおう。
「ここの神社の境内で休ませてもらおうか、予想より進みが遅いから、晩御飯は少なめにして、明日に回すからね」
「ええ~、ペット虐待だにゃ」
僕は文句を言うあんこにおにぎりと干芋をあんこに渡す、幸い神社の外に水が沸いていたので、そこで水筒にも水を補充しておく。
「大丈夫だよ、明日魔王様の町について、仕事の世話さえして貰えれば、ちゃんとご飯食べれるから、今日は我慢するんだよ?」
「しょうがないにゃ、ヒロ様は育ち盛りだから干芋あげるにゃ」
ワガママで人のいう事を聞いてないことも多いけど、あんこは常に僕に気を使ってくれている、それが嬉しいんだけど、少し微妙でもある、僕もそろそろ19歳になる、この1年半の農作業で身体つきも良くなったし、あんこより背も高いんだけど、いつまで僕を子ども扱いしてくるんだろう、ずっとこのままとかはヤダなぁ・・・
神社の本殿に入らせてもらい、端で僕とあんこは寄り添うようにして寝ることにした、季節的には秋なのでまだそんなに寒くはない。
あんこの猫独特のにおいと温かさが心地よく、また一日歩いた疲れから僕が熟睡していると、突然あんこに起こされた。
「ん、んん?どうしたの?あんこ」
「シッ!なにかが外にいるにゃ、取り敢えず起こしたけど、静かにするにゃよ?」
僕は息を呑み、外に集中する、確かにバサバサいう音と、神社の砂利を踏む音が聞こえてきた。
槍を身体の方に引き寄せて、あんこのほうを見ると、あんこも緊張しているのか、2本の尻尾がフサフサに膨らんでいた。
幸い僕たちは神社の本殿の中におり、扉は締めている、モンスターが入ってきたら裏の出口から逃げることは出来るだろう、けど夜目が利くあんこと違い、僕は逃げれないかもしれない。
そんな事を考えて不安になっていると、ガサガサという音が本殿の扉の前でした、僕は不安で震えていたが、あんこは僕から離れ、少しずつ扉の方に近づいて行った。
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