第17話 私は、勝てない

「いやー、もうちょっとだったのになあー」


 体育館を出るころには、外はオレンジ一色に染まっていた。


 後ろに手を組んで悔しそうな表情をしているのは、試合に出ていない瑠々香るるか部長。


「ま、部長なしでこれならいい方っしょ。なんならもう引退会見開いちゃいます?」

「バーカ、ボクは夏の大会まで部長もエースも譲るつもりはないからね。そんなにボクを引退させたかったら、部内の試合で1回でも勝ってから言うんだねー」

「ぐぬぬ……」

「それにしても、杏子きょうこちゃん今日は応援だけなのにありがとうね」

「いえいえ! いい勉強になりました!」


 周りには、軽やかな会話。


 その中で、私たけの口が硬く引き結ばれていた。まだ汗の乾ききらない髪が、頭を重たく感じさせる。

 いや、重いのは頭だけじゃない。胸の内が、泥水をため込んだみたいだった。


 そしてやっとの思いで、私は口を開いて、


「……すみません。私、先に帰ります」


 会話が、止まる。私のせいで。


 数瞬置いてめぐ先輩が、


「あ、優月ゆづきちゃん。今日はありがとうね。無理言って出てもらっちゃって」

「いえ……、おつかれさまでした」


 私は両足に力を込めて、少しだけ早く歩き始める。追ってくる人も、声をかける人も、いない。


 歩きながら、脳裏をぐるぐる廻るのは、今日の試合結果。


 チームは5勝1敗。うち私は5回、試合に出場。


 私の戦績は、0勝5敗だった。

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