転生令嬢と花。2


「それで、こんなことストーカー行為をしているのだから、それ相応の言い訳はあるよね?」


≪…………ライラが、心配で………≫


「心配してくれるのは嬉しいけどさ、それ普通に人間の基準で考えたら犯罪だからね?」


≪ハイ………≫


思わず溜め息を漏らしてしまった私に、びくっと過剰に反応してしょげている火の精霊は、しわしわの顔で返事をしました。


……精霊だしあのベネの部下ってなると、人間のことをあまり理解してなくてやらかすのは仕方ないのですが、もう数年近く私の側にいるのだからいい加減人間の常識を理解して欲しいです。


頭を地面に擦り付けたまま、一向に頭を上げる気配がないレオを見て、哀れに思ったのかアドが宥めるように口を開きました。


「まあまあライラ、一旦落ち着いて。レオ殿だって悪気があった訳ではないんだから」


「それは、分かってる。でも、毎度心配だからって尾行されたらこっちだって嫌だよ」


「流石にそれは駄目だけどね。二度としないって反省しているし、ボク達は人数が増えたって構わないよ」


「………まあ、そこまで言うのなら…………」


もういいよ、と渋々アドの言葉に納得して、レオに声を掛けました。


許しを得たレオは、ぱあっと目を輝かせて、


≪ありがとなライラ! 今度からちゃんと気を付けるな!≫


と言ったので、まあいいかと私も怒りを鎮めました。


ずっと怒りっぱなしも疲れるし、今後はレオも大丈夫でしょう。多分。


暫くレオ含めた皆で談笑しましたが、意外にもアルとレオがお互いに馬が合ったようで、凄く話題が盛り上がっていました。


……………主に私が黒の凶暴熊ブラッドベアを倒したときの話ですが。


いやなんかもうちょい、話題のレパートリーを広げましょう?

 

きゃっきゃと恋バナでもする女子のように、私の戦いぶりに興奮して盛り上がる皆をみて、私は首を傾げました。


「怖くて震えてばかりだったボク達に、ライラはね、安心させるために魔法を掛けてくれたんだ! あのときのライラ、まるで白馬に乗った王子様みたいにかっこよかった!!」


≪あんだけちっこいのに、軽々と木々の間を駆けていくライラの姿は、マジで痺れた!≫


「お父様達相手にスラスラと話してたの、ちょっと憧れた…………」


まるで夢見る乙女のような、うっとりとした表情で騒ぐ三人に、死んだ魚の目になりました。


げんなりとした気持ちのまま、話を聞き流しているリンへ視線を移すと、目が合ってそのまま見つめ合いました。


すん、とどこか諦めたような顔をしている私に、リンは顔を逸らして笑いました。


「………っ、んふふ、ライラ、顔、顔が……ふっ」


「笑いたいなら笑ってどうぞ。もう慣れっこだから」


「………ふっ、あはははははは!!!」


ふっと口元を歪めてそう言えば、リンは抑えきれなくなったのか、涙が出る程笑い始めました。


慣れというものは、大変恐ろしいものですね。


男の子って、こういう生き物なのでしょうか?


……絶対違うだろうな、流石に。

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