光の精霊の戯れ又は風の精霊の悲鳴。 ミアside
≪ライラごめん本当にごめん≫
顔を青褪めながら、何度も繰り返し謝罪をする同胞に、思わず引いてしまった。
◇◇◇
地面に頭を擦り付けて何度も謝る姿は、さながら哀れだと感じるが、私からすればただの変質者そのものである。
ライラはレオの雛鳥だろうに、と今朝心配して契約者に着いていったレオが頭の中に浮かんで来た。
きっとハラハラしながら見守っているだろう。
とりあえず、目の前の風の野郎をどうしようか。
≪ほら、そんな所で青褪めていないでさっさと立ち上がりなさい。だらしないですよ?≫
≪誰のせいだと思ってんの??≫
ポンポンとイアの頭を軽く叩いて声を掛けると、間髪を容れずに切り返された。
ガバッと一気に起き上がったイアは、鋭くこちらを睨んだ。
≪ああ、すみません。そんなことよりも、イア、情報をください≫
その視線をもろともせずに情報の提供を促せば、渋々といった感じてイアは溜息を吐いた。
≪そんなことより?? そんなことよりって酷くない?≫
まあ、いいや。
げっそりとした表情で軽く頭を振って、イアは口を開いた。
≪今部下に集めさせた情報によれば、もう友達の家に着いてるみたい。仲良く遊んでるよ≫
≪そうですか。ならば大丈夫ですね≫
≪………何が大丈夫なの?≫
ほっと胸を撫で下ろしたら、何かしら察知したイアに警戒心丸出しで聞かれた。
その質問にニッコリ綺麗な笑みを浮かべれば、イアはピシリと固まった。
≪ちょっとしつ…コホン、レオを回収して詳しく話を聞くつもりです♡≫
少しテンションが上がってご機嫌な声が出てしまったが、笑顔でそう告げればイアは面白いぐらいに慌て始めた。
≪今なんか言いかけたよね!? 物騒な言葉聞こえたんだけど!! 話を聞く程度で済まされないじゃんこれ!≫
≪何を言っているんです。ただ話を聞くだけですよ、多分≫
≪もう『多分』って言ってる時点でアウトだよ!! ちょ、ミア落ち着いて落ち着いて! 早まらないで、アイツに悪気はこれっぽちもないんだよ!!≫
だからやめてやって、というイアの叫びを聞き流しながら、さていつ頃出るか思考を巡らせる。
急に黙り込んだ私に、イアはゴクリと喉を鳴らした。
恐る恐るといった様子でこちらを見ると、震えた声で問い掛けてきた。
≪モシヤ、ナニカ『お手伝い』サセラレ、マスカ?≫
変な片言でこちらの顔色を窺うイアの顔が面白くて、思わず吹き出してしまった。
≪っふふ。あははは! 流石にあなたに無理強いはしませんよ≫
≪あっ、そうだよね。よかった話が通じてる≫
安堵の息を零すイアに、私は言葉を重ねた。
≪ああ、でもせっかく申し出てくれたので何か頼みましょうか?≫
≪エッ≫
こてんと首を傾げれば、イアは口をあんぐりと開けた。
呆然とした様子のイアに近づいて手を振っても、全く反応を示さない。
≪仕方ありませんね。引き摺っていきましょうか≫
世話が焼ける、とイアの首根っこを掴んで私はライラがいる場所へと向かった。
◇◇◇
≪いだだだだっ!! ぐぇ、苦しいぐるじい!!! ちょ、誰か助けで!! 首、首が!! 首が! 締まってる! ミア、ミア死ぬから! 僕死ぬって!! ちょ、もうやだこの光の精霊ー!!!≫
悲しきかな。光の精霊に引き摺られて行く上司を、風の下位精霊達は見るだけしか出来なかった。
後に風の精霊は語った。
≪あれは光の精霊じゃなくて理不尽の化身だ≫
その言葉を耳にした光の精霊が、風の精霊にそれはもう華麗なアッパーカットを決めたことなんて、それはまた少し先の話である。
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