カオスと化した現場 ジルside
今日はいよいよライラの検定日。僕はこの日をとても楽しみにしていた。
僕とカイが以前検定を受けた時は、お父様とお母様の属性をそれぞれ受け継いでたから、とても嬉しかった。
ライラはどちらの属性を受け継ぐのかなぁとわくわくしていたのに、どうしてだろう。
今僕の目では、騒乱に
お母様に至っては泣いてしまっている。
なぜ、こうなった?
◇◇◇
始まりはやっぱりあの瞬間だろう。
僕達の時と同じように、司祭が声をあげる。
「ライランラック・フロート・トリファーに、女神アニマとアニムスの御加護があらんことを」
「「「「「御加護があらんことを」」」」」
始まりの女神アニマとアニムスに、その者に加護が与えられるよう、まず最初に祈る。
後は属性の色に水晶が光るのを待つだけなのだが………。
どう言う訳か、水晶は見た事もないほど白く、強く光った。
そして
辺りは騒然としていた。
………一体、何が起こっているんだ?
警戒しながら、目を細める。
その間にも、現場は忙しなく動いていた。
「んな!? ライランラック嬢はどこにいる!!」
「皆の者、落ち着きたまえ! ひとまず、これにて検定を終わる。各位、荷物が整い次第、速やかに帰還せよ!!」
慌てる神官達を宥めつつ、司祭は混乱している周りへ帰ることを促す。
困惑しながらも、ゾロゾロと去ってゆく貴族達を尻目に、僕とカイは顔を見合わせた。
刹那、カイの瞳の色が微かに変化する。
その瞳には、同様に瞳の色が変わった僕が映し出されている。
双方の瞳には、今じゃ伝説と語られる、『リーベルタースの紋様』が浮かび上がっていた。
◇◇◇
きちんと紋様が浮かび上がっていることを確認すると、カイが直接話しかけてきた。
『どうする? お前が言っていた最悪の予感が見事に当たってるが』
『どうするもこうも、ライラは呑気に神々と話してるでしょ。というか、魔族の話とかで今頃盛り上がってるんじゃない?』
僕達二人は一言も声を発していないから、この会話は誰にも聞かれない。
否、聞こえないのである。
これは、生まれつき僕とカイにあった力だ。
一応怪しまれないために、表向きな会話をする。
「カイ、一体ライラはどこへ行っちゃったんだろう…!」
「馬鹿。今騒いだってどうしようもないだろ。とりあえず、場は大人達に任せた方がいいだろう?」
「…うん、カイの言う通りだ。焦っちゃ駄目だよね」
「公爵家の者だからな」
「はは、公爵令息も大変だね〜」
笑顔を貼り付けながら、頭ではどう対処すべきか考える。
『ひとまずライラが戻ってくるのを待つか?』
『そっちの方が良さそうだね。お父様達にアレがバレるのは色々とヤバイし。新たな火種を生みかねないからね』
『はぁ…便利なのか不便なのか、微妙すぎるだろ』
『それは元からでしょ。とりあえず、今回は傍観に徹しよう。後々ライラに聞きたいこともあるし』
『それもそうだな。んじゃ、今日は解散』
カイがそう言うと、カイの瞳から紋様は消えて、瞳も元の色に戻った。
同じく、僕の瞳も普段通りに戻っていく。
今この場に残っているのは、司祭と神官達、そしてお父様とお母様、僕達だけだった。
心なしか、カイは嗤っているように見えた。
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