転生令嬢と真実。3


思わず全員で遠い目をしてしまい、数分間の沈黙が続きました。


……………また面倒臭い事が起きる前触れでしかないとは、気付かずに。



◇◇◇



「…その『ケント・コダ』は一体何をやらかしたんだ?」


ズキズキと痛む胃をさすりながら口を開くと、男神ソフォスはこう答えました。


「……魔族を見下し、挙げ句の果てに喧嘩を売りました」


「生粋の馬鹿ってことか」


「そうですよ」


半目になって呟くと、男神ソフォスも神妙に頷きました。


………改めてヤバい事になってないか?


と言うか、喧嘩を売ったと言ったよな??


まさか戦争起きたりしてないよな??


世界を大混乱に陥らせたとか…じゃ、ないよな??


そう考えた途端、背筋に嫌なモノが走りました。


「それで…魔族がブチギレて『戦争じゃオラァ!!』となりまして、戦争が起こりました」


「は?? は??」


唐突に投下された爆弾に宇宙猫スペースキャットのような顔になりました。


「いやー真面目に言って驚くどころか呆れちゃいますよね。詳しく言いますと、幼稚な嫌がらせを繰り返した『ケント・コダ』に、とうとう魔族の堪忍袋の緒が切れてしまいまして、大きな山脈が二つか三つくらい吹っ飛びました」


「嘘だろ」


「嘘ではありません。ガチです」


「他の被害はどのくらいなんだ?」


「『ケント・コダ』及び彼の母国や出身の一族が抹殺されたぐらいですかね」


「うん、自業自得だな」


「そうですね」


被害報告を確認して、自業自得だと分かったので、次の質問をしました。


「それでその戦争がきっかけで魔族と人間の交流に問題はあったのか?」


「……一部では続いております」


「そうか……あぁ、団結力は種族を超えてでも強かったのか。しかし、一部…相当根に持ってるんだなぁ」


「そのようですねぇ…」


なんとなく当時の光景が思い浮かび、しみじみと呟きました。


これは所謂いわゆる『ざまぁ』というヤツですね。


恐らくずっと甘やかされてきたのでしょう。元々の性格と相まって更に我儘が加速して、自分を神聖化させすぎて他者を見下し、そのせいで集団リンチを喰らった…と。


しかもそのせいで一部でしか交流していない。


まとめるとこんな感じになるのでしょうかね?


まあ五百年も前の事ですし、私がとやかく言うべきではないでしょう。


しかし、なぜ魔族は表舞台から消え去ったのでしょうか? 


それと私の転生が何に関係しているのでしょうか?


顔をしかめると、男神ソフォスが苦笑いしながら口を開きます。


「このことを機に、魔族はあまり人族に姿を現さないようになったんです。先程言った通り、、姿を現しません。ですから、んですよ。その後数十年後ぐらいには、魔族の存在は伝説扱いになりまして、『魔族は不老不死である』と根も葉もない噂が流れてしまったんです」


「………それで、その噂を耳にした王侯貴族達が権力使って後ろめたい事をしていたのか?」


「はい、魔族の子供を誘拐して奴隷にする、という事ぐらいしかやっておりませんが」


「充分アウトだな」


「アウトですよ。まぁそれで魔族の長がキレて、奴隷にされた魔族全員救出して、奴隷にした奴ら全員ぶち殺して、国諸共滅んだ所もありましたし」


話を聞いていて、割と物騒だな、と思いました。


神とデスマッチをするよりかはマシなんですけどね。


男神ソフォスは話を続けました。


「そのこともあって、魔族は『人間』と言う単語を聞き取ると、怒りを露わにします。魔族は基本長寿ですから、子供を連れ去られた魔族が複数いるんでしょうねぇ…で、最初のアルクさんがこちらの世界に来た原因の話に戻りますと、魔族を恐れたある王が、禁忌である『異世界人召喚』を発動させたのですが失敗しまして、誤ってライラさんの魂がそのまま少女の死体に受肉したって感じです」


「つまり私は魂が別の世界に引っ張られ、そのままそこにあった死体に受肉。そこから全て始まったと………完全にとばっちりじゃないか!!」


「とばっちりですね〜」


告げられた言葉が余りにも衝撃で、思わず叫ぶ私に、男神ソフォスはのんびりと返しました。


いやいや、おかしいだろ!? なんで私が次元超えて異世界に転生してるんだよ!? 今更だけど!


……まぁ、転生しなかったらそのまま記憶を消去されて、またゼロから輪廻転生の輪を巡ることになっていたんだろうがな…。


そう考えると、悪い気はしない。どっちみち、あのままではベネとも国王とも会えなかっただろうしな。


ただ一つ、気に食わないことがあるけど。


そんな私の心を読み取ったのか、神々は首を横に振りながら口を開けました。


「あ、この件は私達は全く関与していませんからね!? そもそも神とは下界に干渉してはいけないと言う鉄則がありますから!」


「…ちっ、」


思わず舌打ちすると、神々は声を荒げました。


「ちょ、今舌打ちしましたよね!? うわ、この人、腹いせに八つ当たりしようとしてくる!!」


「舌打ち? 私が? はは、冗談はよしてくれ。私が神にそんな事をするはずないだろ」


「したから、思いっきりしましたから! なんなら初対面の時に殺気を放ってましたよ!?」


「勘のいい奴は嫌いだな」


「ちょ、ま、落ち着いて!? 一旦落ち着きましょう! そんな物騒なモノはしまって!!」

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