転生令嬢の検定。3

お兄様達の謎法則に首を傾げつつも、今はそういうことを考えるべきではないと判断したので、思考を切り替えました。


お父様が立ち上がり、それに続いて私達も席を立ちます。


「トリファー公爵家の方々の御成である!皆の者、道を開けよ!!」


神官さんがそう叫ぶと、レッドカーペットの横にずらりと人が頭を垂れ、列を作っていました。


…なんかむず痒いですね……前世も前々世も庶民だったから慣れないデス……。


モヤモヤとしたものを、溜息と共に吐き出して、レッドカーペットの上を歩いて行きます。


そして、祭壇の下まで来ると、他の神官さんとは違う服装の方が来ました。


「私はこの教会の司祭をしているナムレス・フォンズーチという者でございます。本日は我が教会にお越し頂き、誠にありがとうございます」


なんと、青い服を着ていた人は、司祭さんでした。


司祭さんの名前は、ナムレス・フォンズーチというらしいですね(変わらず司祭さんと呼びます)。


司祭さんは、白髪に青い目をしたお爺さんです。


「いやいや。こちらこそ。お忙しい身であられるのに、無理矢理頼み事を聞いてもらってすまない」


司祭さんの言葉に、お父様はニッコリと笑って返しました。


「それでは我が娘の検定をよろしく頼むよ」


「御意」


お父様の言葉に、司祭さんもニッコリと笑って、私を祭壇の前に誘導してくれました。


祭壇の前へ来て、私は驚愕しました。


それは––––––始まりの女神と謳われる、双子の女神アニマと女神アニムスの像があったから。


他にも神の像はありますが、思い出深いのはその二つでした。


前世の私アルクーリ・ドルクをこの世界に導かせたであろう神。


そして、今世の私ライランラック・フロート・トリファーの人生を歩む原因だと思われる存在。


女神アニマは、足まである長い髪に、切れ長な瞳が印象的な容姿をしています。


服は……古代ローマとかそこら辺の人達の衣装ですね。


白い布を肩で金属に括り付けられる?服装で、頭にはゼラニウムの花冠はなかんむりを付けています。


対して、女神アニムスはショートカットに目を閉じていて、頭にはシロメツクサの花冠を付けています。


服装は女神アニマと似たような感じですね。


私は二人の女神像を睨みつけるように見つめました。


……………アルクの時は大して気にもしなかったのはどうしてでしょうか。今改めて見て、前世の私アルクーリが転生した理由を探らなかったのは不思議です。


まだ全ての記憶、力を取り戻してないので、今更考えても意味もないのですが………。





考えに没頭していて、私はアルクーリに意識が引っ張られていたことに気が付かなかった。



◇◇◇



––––––なんだ、これは。何かを見逃してる気がする。思い出せないし、誰かが記憶を封印でもしてるのか?


『………誰だ、誰だ、私を転生させたのは。誰だ? 私の、大切な人を奪ったのは』


目の前には、血塗れで倒れている人の姿。 


今でも鮮明に思い出せる。あの日、あの時–––私が…………!!



◇◇◇



そこで私はハッとした。司祭……司祭さんが、黙り込む私を不思議そうに見てきたからです。


「ライランラック嬢……?」


覗き込んできた司祭さんに、「なんでもないですよ」と告げ、祭壇へきちんと目を向けました。


危ない……今、完全に意識がアルクーリ前世に引っ張られていた……気を付けなければ。 


前世は前世、今世は今世で全く違いますから…。アルクライラで別人です。


祭壇に飾られている水晶があり、水晶を守るように装飾品が、周りを囲んでいました。


「ライランラック・フロート・トリファーに、女神アニマとアニムスの御加護があらんことを」


司祭さんがそう言って、片膝をつき、両手を組みました。


「「「「「御加護があらんことを」」」」」


私や兄様達も同じことを言って、同じ動作をしました。


私は立ち上がると、水晶に右手をかざしました。


水晶は青白く光り、その光は一瞬で周囲を埋め尽くしました。


そして、光が収まった後、私の目の前には女神アニマとアニムスを始めとした、この世界の神々の姿がありました。

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