僕の小さな恩人… 。 ネロside

僕は、ネロ。ネロファスト・ア・イーリス。

イーリス王国の第一王子。


お察しの通り、次期王だよ。


ちなみにイーリス王家の家族構成は、こんな感じ。


父上、母上、僕、弟、弟。


僕の弟は、双子だよ。


父上は、金髪で深海みたいな深い青の瞳。

母上は、桃色の髪で柔らかい黄緑の瞳。

僕は、父上と同じ金髪で母上と同じ黄緑の瞳。弟達は、母上と同じ桃色の髪で父上と同じ青の瞳。


僕は、毎日退屈だった。


舞踏会やお茶会とか、まとめて社交界だね。


子息や令嬢、貴族、皆僕の地位と顔しか興味ない。馬鹿らしいよね。


でも、馬鹿な貴族達とは正反対の貴族もいる。数少ない中でも僕達王家が、一番信頼しているトリファー公爵家。現公爵で、宰相でもあるギル殿は、父上の古くからの親友だ。


そして、ギル殿の息子、ジルとカイ。

二人は双子にしては、お互い違う容姿だ。


だけど、ギル殿達が最近…二年前からかな?

彼らがとある一人の女の子の自慢話をするようになった。ギル殿の娘であり、ジルやカイの妹である、ライランラック嬢。


ギル殿やジルはともかく、あのカイが自慢するとなるとね……少し気になる。


けど、彼女に会いたいと言えば、彼らが煩いだろう。


会いたいな。


小さな思いがあの時、叶った。



◇◇◇



一昨日、僕はトリファー領に視察で来ていた。誘拐されそうになったけどね。


けど、それが彼女との出会いだった。



◇◇◇



「オイッッッ! 早くこっち来いッッッッ!」


体格の良い男が力任せに僕の腕を掴む。 


痛いな。


そんな感想しか出てこない。


魔法で反撃しようか迷った時、二歳ぐらいの小さい女の子が現れた。


「やめにゃしゃい! にゃにをしているにょでしゅか!」


なんでこんな所にこんな、小さい子が!?


小さい女の子は、素早く僕達の所に来ていた。二歳の子の動きでは無かった。 


すると、女の子が来た所を見ると女の子の母親らしき人が大きく口を開けている。


だよね。


「ガキが、調子に乗ってんじゃねーぞ!」


突然、男が女の子を殴ろうとしたのだ。


危ないっ!


咄嗟とっさに助けようと動いた時…。


≪≪ライラに触るな!≫≫


フワッと男性二人が女の子の前に現れた。


「いあ、れお?」


女の子が首を傾げて言った。


イアとレオと言う名は、男性二人の名だろう。


≪勿論、私もいますよ≫


次に女性が現れた。


「みあ!」


女性の名は、ミアと言うらしい。


「あぁ! 誰だテメーら!」


彼らの登場でずっと黙っていた男が怒鳴った。


すると、女性がこう答えた。


≪あぁ、申し遅れましたね。私達は、精霊です。貴方が私達の大切な人に傷を付けようとしたので、片付けにやって来ました≫


余りの衝撃に僕は、「精霊!」と驚いてしまった。


精霊! 大切って……あの子、この精霊達と契約してるの!えっ!しかも高位三人!


女の子のお母さんも驚いていた。


すると女の子は、意を決したように姿を変えた。まるで、魔法のように。


月光のように輝く銀髪。長い睫毛に飾られた純白の瞳。雪のように白い肌。


まるで、女神や天使。本来の姿に戻った女の子は、凛としていてとても綺麗だった。


「わたしは、とりふぁーこうしゃくけちょうじょ、らいらんらっく・ふろーと・とりふぁーでしゅ! わがりょうでのそのぐこう、みをもってつぐにゃってもらいましゅ! かくごにゃしゃい!」


女の子の言葉に男は、徐々に青ざめた。


だけど僕は、逆にその言葉に驚いた。


えっ、あの子がライランラック嬢? 愚行? 何処でそんな言葉を覚えたの!?


心の中で、色々ツッコミたいがあの子の言葉が二歳の言う事じゃない。本当に二歳?



僕が内心焦っていると、女の子は精霊二人に男を気絶させるように言った。


精霊二人達は、見事に男を気絶させた。


男が気絶した後、もう一人の精霊が拗ねた。


だけど女の子は、ありがとうと言った。


礼を言われた精霊は、顔を赤くした。


すると女の子、ライランラック嬢は、僕に話しかけて来た。


「だいじょうぶ? こわくにゃい? どこもけがしてにゃい?」


別に怖くなかったし、何処も怪我して無いのに…。


何で、こんなに暖かいの?どうして?


流石に情けない顔を見せる訳にはいかないので僕は、誤魔化した。



突然、僕の事を貴族か王族と言って来た時には驚いた。まさか見破られるとは。


素直にこの国の王子であると言うと、ライランラック嬢のお母さん…リリィ公爵夫人が謝罪して来た。僕は、平気ですと返した。


しかし、精霊と契約したとなると王との謁見がある。例え平民でも。


その事を伝えると夫人は、仕方ないと承諾してくれた。


だけど、その後の光景に僕は笑うしか無かった。だってねぇ。


風の精霊…イア殿がライランラック嬢に抱きついて、他の精霊達は、ライランラック嬢にスリスリするし、夫人が精霊達にずるいと言うんだよ? 笑わない方がおかしいって。



少しライランラック嬢に興味を持った。

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