転生令嬢、誘拐犯をやっつける。

「ほあー」


今、私は領地にお母様とお忍びで来ています。



◇◇◇



「ライラちゃん。あっちに美味しそうな焼き鳥屋さんがあるから、行ってみましょう」


お母様が言う焼き鳥屋さんに行ってみると、焼き鳥の良い匂いがしてきました。


ん〜、この匂い。お腹が空いて来ます。


「いらっしゃませー。胸やモモ、手羽先など、どれも絶品だよー」


店員さんの活発な声が聞こえてきます。


「じゃあ、タレのモモと塩の手羽先をくださいな」


お母様が店員さんにモモと手羽先を頼むと、店員さんはあいよと言って、すぐにモモと手羽先をくれました。


「銅貨、三枚だよ」


一応、この国のお金についてざっと説明します。


一番高いのが、白金貨。それから、準金貨、銀貨、銅貨です。


日本円で言うと、こんな感じですね。


白金貨=千億


準金貨=百万


銀貨=千


銅貨=百


終わります。


「ライラちゃん? ボーってしてるけど、大丈夫?」 


「! だ、だいじょうぶでしゅ」


危ない。気をつけてないといけないません。


「じゃあ、あそこの路地裏に行って食べましょ」


路地裏?大丈夫でしょうか。


お母様の言う通りに路地裏に行くと、そこには……。


「オイッッッ! 早くこっち来いッッッッ!」


体格の良い男の人のが、男の子を連れ去ろうとしてるではありませんか。


どうしよう、とりあえず助けた方が良いですよね?


考えるより先に、私の体は男の人と男の子の所に動いていました。



◇◇◇



「やめにゃしゃい! にゃにをしているのでしゅか!」


おっふ。やってしまいました。


後ろでは、きっと驚いてお母様が目を白黒しているでしょう。ごめんなさい、お母様。

でも、男の人の愚行は絶対に許せないので。


ああ、男の子も驚いています。


「ガキが、調子に乗ってんじゃねーぞ!」


男の人が私に吠え、殴ろうとした時です。


≪≪ライラに触るな!≫≫


突然、見覚えのある二つの後ろ姿が見えました。


「いあ、れお?」


淡い緑色の髪を揺らし、私を庇うように前に立つイア。燃えるような朱色の髪でイアと同じで、私を庇うように前に立つレオ。どうして、ここに……。


と言うか、家で待ってるように言ったはずなのですが。おまけに、成人男性の姿になっている始末です。


≪勿論、私もいますよ≫


「みあ!」


ミアも来てたんですか。


「あぁ! 誰だテメーら!」


突然のイア達の登場で、黙っていた男の人が怒鳴りました。


≪あぁ、申し遅れましたね。私達は、精霊です。貴方が私達の大切な人に傷を付けようとしたので、片付けにやってきました≫


ミアが笑って言いました。でも、後ろから凄い殺気が。


「精霊!」


男の子が驚いてしまいました。ですよね。


あぁ、目立ってしまいました。でも、イア達が来てくれて助かりました。


絶好のチャンスに私は、変装を解いて、暴露しました。


「わたしは、とりふぁーこうしゃくけちょうじょ、らいらんらっく・ふろーと・とりふぁーでしゅ! わがりょうでのそのぐこう、みをもってつぐにゃってもらいましゅ! かくごにゃしゃい!」


私が自分の名前を言うと、男の人の顔は、徐々に青くなって行き、絶望の顔色になりました。


「いあ、みあ、そのひとをきじぇつしゃしぇてくだしゃい!」


私は、イアとミアに男の人を気絶させるようにお願いしました。


≪分かった!≫


≪分かりました!≫


イアとミアは、強く返事してくれました。


≪風達よ、悪しきその男を襲いたまえ!≫


≪光達よ、邪悪な者を捕らえたまえ!≫


イアとミアの凄まじい自然の力が、男の人を襲いました。


「ッ! ぐげあぁぁぁっっっっ!」


二人の力で男の人は、見事に気絶しました。

ざまぁみろですね。 


≪俺の出番無しかよ≫


レオが拗ねたように呟きました。


「れお、ありがとう」


≪ッ! どう致しましてっ!≫


さてと、男の子の方は大丈夫でしょうか。

私が男の子に体を向けると、男の子はまだ固まっていました。


よく見てみると、四歳ぐらいの子です。


平民の子でしょうか。いや、この違和感は…。


「だいじょうぶ? こわくにゃい? どこもけがしてにゃい?」


んー、見る限り怪我は…かすり傷が数個だけみたいですね。良かった……。


「怪我は、無い。…助けてくれて、ありがとう。でも、無茶はしないで。それと、その精霊って君の精霊?」


どうしよう、素直に言った方が良いのでしょうか?言った方が良いでしょう。


「うん。しゃんにんとも、わたしのしぇーれーだよ。で、あにゃた、きじょくかおーじょくでしょ?」


平民だったら、変な違和感、感じませんし、

賊なら殺気もあるから。でも、この子は違う気がします。確かに違和感はあるけど、賊とは何か違います。殺気なんて感じないのです。となると、答えは簡単です。貴族か王族か。きっとこの子は、子息か王子のはず。


「鋭い。僕は、この国の王子。第一王子です。ネロファスト・ア・イーリス」


……やってしまった。


「ライラちゃん…はぁ」


お母様! 呆れた目でこちらを見ないで下さい! 仕方ない事なのです。 


「…ネロファスト王子、娘が無礼を働いてしまって申し訳ございません」


お母様が、ネロファスト王子に謝罪の言葉を言うとネロファスト王子は、「平気です」と言って、爆弾発言をしました。


「しかし、精霊と契約したとなると、王城に来てもらう事になります。それでよろしいか?」


ネロファスト王子がお母様に問うと、お母様は、「仕方ありません」と返しました。


「あ、おとこのひと…うしましょう?」


男の人の事を忘れていたので、どうするか聞いてみると二人とも今、気づいたみたいに声を揃えて、あ、と言いました。


「その人は、こちらで引き取るから大丈夫です」


あ、良かった。


≪ライラ、王城に行くみたいだけど大丈夫?≫


イアが心配してくれたのか、ひょっこりと出て来て言いました。


「だいじょーぶだよー。おかーしゃまたちやいあたちがいてくれるから。こわくにゃいよー。だから、あんしんして」


優しく微笑みかけるとイアは、ありがとうと言ってくれました。


≪イアばっか、ずるいぞ≫


≪そうですよ≫


レオとミアがイアに対抗するかのように、私の頬にスリスリしてきました。


「精霊様達ばかり、ずるいです!」


お母様が拗ねたように言い…は?


エ、ナニイッテルカワカラナイデス。


イア達もそうですが、お母様が意味分からない事を言っているのですが。


ネロファスト王子は、何故か震えているし、何が起きているのですか!


誰か、常識のある人、来てください!!



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