第2話 カーチャ
ユーリーは父とともに、縁談相手であるクニン家の館を訪れた。首都から内陸に入った広大な土地に建つ立派な建物。
「このあたり全部、クニン家の土地なのかな」馬車のなかでユーリーはつぶやく。
「そうだろうな」マーティンは答える。
「広いけど、誰もいなくて寂しい場所だな」
*(クニン家の館、ユーリー、カーチャ)
ユーリーは縁談相手のエカテリーナ・クニンと会った。
「『カーチャ』って呼んでいいわ」とカーチャはいった。
カーチャは16歳。肌の色が白く、髪が黒い、人形のようできれいだとユーリーは思った。
「あなた、軍人らしくは見えないわね」
「まだ士官学校を出たてでして。まだ正式には軍人ではありません。この夏で卒業しました」
「そう。私、軍人は嫌いです」
「どうして?」
「いばってばっかりで、自分を立派に見せることばかり熱心だから。空っぽなのよ。そもそも暴力で解決しようとするのが野蛮だわ」
「立派な軍人もいますよ。暴力は野蛮ですが、その野蛮な暴力に対抗できるのも暴力しかないのですよ。お嬢さん」
「あなたの立場からすれば、そう答えるでしょうね」
* (クニン家の館、ユーリー、アリーナ)
カーチャにはアリーナという妹がいた。
「カーチャはあなたと結婚しないわ」アリーナはユーリーに言った。
「あまり好かれていないのかな」ユーリーはアリーナに向かい、子どもに話しかけるように喋った。アリーナはカーチャと1歳しか年齢は変わらないが、身長が低いせいでユーリーには子供のように見えた。
「いいえ。好きかどうかに関係なく。それか彼女の主義だから」
「しかし我々には事情があります。結婚をするに十分な」
「ええ。知っています。あなたが私達の家柄を欲しがっているのも、私達がお金が必要なのも。でもカーチャにとってそんなことはどうでもいいんです。私達家族がどうなろうと、カーチャにとっては、それよりも大事なものがあるから」
「何がそこまで大事なんだろうか」
「それは、カーチャ自身の口から聞いてください」
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