何を知っているか
「そもそも、高森さんってどんな男の子が好みなの?」
高森さんと一緒に学校に向かいながら、あたしは聞く。すると、高森さんは考え込むように首をかしげた。
「うーん、そういえば三次元にはほとんど興味はなかったな」
高森さんは二次元と三次元について教えてくれる。二次元は、かんたんに言えば、アニメやマンガに出てくる登場人物。三次元は、実際に存在している人たち。
高森さんはどうやら、二次元のアニメやマンガのキャラクターにしか興味がないみたい。それじゃ、三次元? 現実で彼氏候補探しするのって難しいんじゃないかな。
あたしがそう言うと、高森さんは笑う。
「でも、これから興味を持って考えてみるから。そうそう、氷の王子なんてニックネームとか、彼の性格なんかはなかなか好き」
「ええっ!?」
氷の王子っていう呼び名とか、彼のあの冷たい性格が好き!?
「だって彼、すごくクールじゃない。かっこいいと思うけどなぁ」
高森さんが目をきらきらさせてあたしを見る。ごめん、あたしには分かりません。
「彼の双子の弟の陽人くんも、なんであんなに人気があるのか、個人的に興味がある」
高森さんは、ふふっと笑う。すごく、楽しそう。
「あと、あとね。……植田くんにも、興味があるよ」
「植田くん!?」
植田くんの名前が出て、あたしはぎょっとする。植田くんは、あたしと同じクラスの男の子。バスケットボール部に所属していて、すらっと背が高い。
すごく見た目はかっこいいと思う。だけど、性格が……。
彼のあだ名は、ヤンキー植田。くちぐせは、
「ああっ!?」
声がよく通るせいでなおさら、こわい。そのヤンキー植田くんにまで、興味があるなんて。高森さん、いろんな人に興味があるんだな。
あたしが一人で感心していると、高森さん、一冊の少女マンガを取り出す。あ、マンガの持ち込みは禁止なのに……。でもそれを言ったら、魔法のステッキだって持ち込み禁止だよね、きっと。
「ほら、これ見て。こんな感じだったら面白いなって」
その少女マンガには、植田くんみたいなしゃべり方の男の子が出てきていた。でも、このキャラクターは甘いものが大好きで自分で作っちゃうくらいの料理好きの男の子で、あたしもかわいいと思っちゃった。
そこでふと思う。あたし、植田くんの何を知ってるんだろうって。話し方はたしかにこわいけど、それだけ。それ以外の彼の何を知ってるんだろう。
それは植田くんだけじゃない。陽人くんや蒼太くんに関しても、そう。陽人くんのことが好きだけど。あたしは、陽人くんの何を知ってるんだろう。氷の王子って呼ばれてる蒼太くんの何を知ってるだろう。
「月島さん、だいじょうぶ?」
高森さんがあたしの顔をのぞきこんでくる。あたしは、ぶんぶんと首を横に振って考えごとをふきとばして、笑う。
「だいじょうぶ。ごめん、ちょっとぼーっとしちゃって」
高森さんの彼氏候補探しもきっと、人助けになるよね。高森さんの思う彼氏候補を見つける手助けができるといいな!
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