あたしの解決策

 そう、ねねちゃんに言われてあたしは、返事に困る。なんのためにあるんだろう。


「友情を深めるためのもの……なのかな」

「わたしもそう思う。でも、その友情を深めるためのはずだったもので、友情がこわれる人もいる。なんだか、変な感じだよね」


 ねねちゃんはあきらめたような笑いをうかべる。


「でも、こうは思わない?」


 あたしが言葉を発すると、ねねちゃんはあたしの方に向き直る。


「今、二月だよ? あと二か月でクラス替えがあるんだよ? だったら、あと少しがまんすればきっと、また新しい出会いがあるよ、きっと」


 あたしの言葉にねねちゃんは、はっとする。


「たしかに今まで仲良しだったはずの友達とも、また同じクラスになるかもしれない。でも、今別のクラスにいる子たちとも、必ず同じクラスになる。その中からまた、新しい友達を作ればいいじゃん。そもそも、無理して仲良くしてたんだし、ずっとその関係を続ける方が、しんどいよ」


 あたしはここで言葉を切って、お母さんに言われたことのある言葉を告げる。


「ピンチは、チャンスでもあるんだよ、ねねちゃん。今ねねちゃんはショックを受けて、落ち込んでる。ある意味で、ピンチだよね」


 ねねちゃんは小さくうなずく。あたしは続ける。


「そんなときは、どんな小さなことでも見落とさないようにして、プラス思考に生きるの。今なら、クラス替えがあるってことがそれかな。それと、バレンタインデーのことがきっかけで、友達と縁が切れたこと」


「縁が切れたことも、チャンスなの?」


 ねねちゃん、顔をしかめる。


「そうだよ。いやなことだけど、そのことがあったから、ねねちゃんは自分と相手の価値観があっていなかったことを再確認したわけでしょ? そんな人たちとずるずるつきあったって、自分がしんどいだけだよ。ここで縁が切れてよかったって考えるんだよ。きっと、四月になれば新しい出会いが待ってる。そこで、自分の価値観に近い友達を見つけるの。そしたら、また楽しい日々が始まる」


「そっか……」


 ねねちゃん、安心した顔をする。


「そうだよね。無理に一緒にいたって、いつかはこうなってたよね。ただそれが、思ったより早く来ただけ。よかった、受験の時期とかじゃなくて」


 冗談めかして、ねねちゃんが言う。よかった、元気が出てきたみたい。その時だった。


 ねねちゃんの胸から、小さな光が飛び出した。それは、あたしのリュックサックの方へまっすぐ飛んでいくと、リュックサックの中に吸い込まれていった。


 きっと、ねねちゃんの感謝の証だ。スズさんが吸収してくれたんだ。


 あたしがほほえむと、ねねちゃんもうれしそうに笑う。


「ありがと、ゆかりちゃん。気持ちが楽になったよ。こんなことでくよくよ悩んでたのが、情けないわ」


 ねねちゃんは言うと、リュックサックを背負いながらあたしに言う。


「久しぶりに、二人で帰ろ」

「うん」


 あたしは言って、あわてて帰る準備を始めた。

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