第3話 ガラケーデビュー
スマホを捨てた。
先日、借り物を返すのに、後輩と待ち合わせをしていた。後輩はアパートについたら連絡してくれと言っていた。原付で玄関前につけて、連絡を取ろうとしたその時に、私のスマートフォンは手から滑り落ちて動かなくなった。丁度買い替え時のいい時ではあった。しかし、いまそんな金はないし、新しいのを買いたいと思わなかった。だから、これは捨てようと思った。
その夜友人と会食があった。もうスマホは持たないよ。と言っただけなのに、友人らは、むりだとか、隠居でもしない限りは生きていけないよ、と喋った。なるほどたしかに、ないと生きていけないような不安があった。もっていないととんでもないことに会うような心地であった。
自分は筋金入りの方向音痴であった。子供のころは、よく道に迷ったりした。高校入学して初の登校日には、予行練習も虚しく、途中で道を間違え遅刻した。ひどく目立ってしまって、少しばかり恥ずかしい思いをした。だが、最近はすっかり解決して、迷子になることは全くなくなった。また、友達も増えた。自分から誘うことをしないので、昔はよく一人で遊ぶか、部活動に明け暮れる日々であった。最近は、暇になった友人らが連絡してきて、その日のうちに遊んだり、夕飯をともにすることが多くなった。そして、顔もそこそこましになったように思う。人気のある顔だちではないが、自分なりによくなったなと思うのだ。
家に帰るともう灯りが消えたケージにカエルが二匹いた。カエルの瞳孔は大きく開き、なんともかわいらしいでしょうと言っている。それに、二匹並んでこちらをみている。ふと、この様子を誰かに自慢したくなった。さあ、写真を撮ろうを思ったが、ああ、と我に返った。カエルがふふふ、と笑った。実にいい顔をしていた。
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