第4話 ニワタリとクラリス
病院という場所がこんなにも広く、人も多いということはいままで思ったことがなかった。
夢の中に来て、もう3回目になるか?いや~ほんとに広すぎる。クラウの奴、元の病院からいじり過ぎだろ。
毎回、クラウの仲間たちからばれないように行動しなければならないし、あの気味の悪いネズミどもが解き放たれる前に隠れなければならないし、あの鳴き声と悲鳴をずっと聞いていないといけないし。もう鬱になるな。
そう思い、始めていく階の病室に踏み入れた。すると、そこに写真に写っている青年と同じ顔をした青年がベットで寝ていた。腕には点滴が打たれていた。
ニワタリは、ハッと反応し、彼から点滴を抜いた。
なるほど、きっと記憶を忘れさせる効果があるんだな。夢がリセットされてから約20分か、水分を摂らせて効果を薄めればまだ間に合うか。
「おっ、おかしな恰好をしたお兄さんじゃの。看護師さんかなにかかえぇ、体温測るのは9時ぐらいになんじゃがの・・・」
おっと反対側に老人がいることに気づかなかった。
「いえ、違います。ちょっとこの子に用事があって・・・あはは・・・・・・」
点滴を抜いたことがばれないように体の後ろに隠した。
「そうか、じゃあ、わしはトイレにいくとするよ。よっこらせ」
そういい、老人は廊下へ出ていった。足腰がぶるぶるで、点滴スタンドがなければ立っていられないほどに、いかにも一人で行ってはダメだろうという雰囲気だった。
彼はまだ眠っている。そういえば、エレベーター横に自動販売機があったな。
その後、目を覚ました亮太に水をわたし、9時に来るという異世界人が変装している看護師を避けるためいったん離れた。
廊下で、看護師に怒られながらもトイレから帰ってきているあの老人を横目に廊下を歩く。
看護師と亮太君は二人で病室を出て、エレベーターに乗った。
きっと、彼を化け物の被害を受けないところに連れていくんだな・・・・・・。
そう思い、自分は階段を使い下りる。
どこの階で彼らが降りるかわからなかったため、2階でいったん降りていないかを確認。
降りてなかったためそのまま階段を降りる。そういうことなら1階で降り・・・・・・!
奴だ!クラウだ。
「やべっ、いままで病院内で歩いていなかったろ!」
小声でつい口にもれてしまったが、なんとか壁に隠れ、クラウにはバレなかった。
そこから、眠らされた彼がさらわれていく一部始終を見ていた。
しまった。まったく予想外のできごとだ。
しかし、いまあばれて出ていってしまったら、圧倒的に不利。ニワタリは後ろからついていくしかなかった。
「隠れても無駄だぁあ!!」
「勘弁してくれ・・・・・・」
ババババババババ!という銃声。ニワタリは壁に背中を合わせて身を隠していた。
バレた。普通にばれた。こういう潜入系は自分苦手なんだって再確認できた。
クラウは部屋にこもってしまい。今こうして、あの両手にサブマシンガンをもっている看護師の相手をしている内にも、亮太君がなにをされているかわかったものではない。
「ねえあーんた。クラウ様から聞いたよ。なんたって地球で異空間を専門にしている奴なんだってね、名前は忘れちゃったけどね!」
「よくご存じで!覚えてもらえてなくてうれしいよ!」
カシマは懐からあのマグナムを取り出し、反撃しようとするが、またもやあのサブマシンガンの連射。顔を出せない。
「ねぇ、どうすんの?私、久しぶりに銃撃ってもいいって許可されてうれしくてさ~、ねえ大人しくでてきてよ。ハチの巣にしてやんよ!」
ババババババババババババババババババババババ!!
銃声からするにあの女は少しずつ距離を詰めてきてる。
「なんて言った!?撃つのやめてくんないと話聞こえないですけど! まじで!」
女の口調がうつる。それほどに焦っている。
携帯が鳴る。カシマからだ。もう正直に伝えよう。
「カシマ!すまない。亮太君が捕まっちまった!今追いかけてる、説教はあとにしてくれ!」
バババババババババ!という銃声
「知ってます・・・。クラウが放送して伝えてくれました・・・・・・とりあえず、ニワタリ君はそのまま亮太君を迎えにいってください。こっちは少し時間がかかりそうです。終わったらまた連絡します。sky〇eで連絡しますね」
「だぁぁかぁらぁ! メー(ブツッ)ルで送れえぇぇぇ、切るんじゃねぇぇぇ、弾がうるせえぇぇぇ!」
もう発狂もんだ。もうこっちからケリつけてやる!あの女の弾が切れるまで待ってられねえ。
「なあ!看護師さん! クラウが、もっと俺について話してたことはあるか?」
「嫌、とくにぃ~」
「俺の倒し方とかは?注意することとかは?」
「ないわね~それぐらい雑魚ってことでしょ!」
また、銃を乱射してくる。このままここにいれば壁が崩壊しそうだ。
そうか、クラウはこの子になにも伝えていないのか。なら・・・・・・。
「看護師さん、あんたは強い。認めるよ・・・・・・。ちゃんとサブマシンガンをリロードするタイミングもずらしてるし、もし俺がでていけば確実に頭を打ち抜かれるだろう」
「な~に? 急に弱々しくなっちゃって」
「名前を聞いてもいいか?俺の仲間にあんたは危険人物だってちゃんと言い聞かせないとな」
「私の名前?あハハハハッ。これでわたしも地球で有名人ってわけ?いいわ!クラリスっていうのよ!」
「そうか・・・・・・」
そういって、ニワタリは立ち上がり、壁から身を出し、クラリスの目を見る。
「じゃあな!着物野郎!」
クラリスはトリガーを引こうとした。しかし、クラリスの表情は固まる。
「あれ?なんで?体が動かない・・・・・・」
ニワタリは、クラリスから目を離さないように歩きながら近づき、右手に持つリボルバーでバァン! と一発。彼女の胸のど真ん中。
「うっ・・・なっなにが・・・・・・おこっ・・・・・・て?」
「クラウから、俺の能力についてなにも知らされてなかったんだな。ようするに捨て駒ってところか」
ニワタリは目を閉じたのと同時に、クラリスはその場に倒れこむ。持っていたサブマシンガンは激しく音を立てて床に落ちる。
「そん・・・・・・な、クラウ様・・・・・・」
そう、俺のこの力は一族に伝わるもの。本当の名前を知っている相手であれば、自分が睨むことで相手の行動を制止することが出来る。操作することはできないが、弾一発を心臓に打ち込むのには十分な時間を稼ぐことが出来る。まぁ、目の乾燥との勝負でもあり、一日一回しか使えぬ大技でもある。
ただ
「もっといい上司につくべきだったな」
はっきりいって相手と正々堂々と戦うわけではないから罪悪感を強く感じる。
亮太君とクラウがいる部屋へ入る前の出来事である。
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