死後
男は常々思っていた。
死んだらどうなるのだろう。
ある日、YouTubeで動画を見た。
「北海道で流氷に乗ってみた」
そうか、死んでみればいいのか。
男はちょっとコンビニに行くくらいの感覚で、首を吊ってみた。
呼吸は停止し、心臓も止まった。
しかし、意識は途絶えなかった。
天国も地獄もなかった。
意識は、死後も肉体に留まり、感覚はそのままだった。
男は自宅で首を吊ったので、遺体が発見されるまでに数日がかかった。真夏に自殺した男は、数日の間、自分の身体にウジが湧くのを感じていた。蠢く虫に齧られる感覚は、耐えがたいものだった。
死体の焼却は拷問であった。肌が焼けただれ、溶けていくのを男は感じた。骨だけになっても、意識はあった。菜箸で突かれるのは気分が悪かった。
そして、永遠がやってきた。
男は永遠に男であり、輪廻転生はなかった。
死後には、永遠の暗闇があった。
ショートショート作品集 リウノコ @riunoko
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