バレンタイン

 今日はバレンタイン。朝、教室に向かうと、いつもよりざわざわしていた。この学校に限って浮き足立つ生徒はいないだろうと思っていたけど、甘かったらしい。チョコだけに。

 風紀委員としては複雑な気持ち。

 まあ、チョコを渡し合うくらい良いか。勉強漬けで、息の詰まるような日々を送っている生徒も多いはず。なら、イベントごとは大事にしないと。


 何事もなく1日が終わろうとしていた。

 風紀委員の仕事を終えて、昇降口に向かう。

「あの、先輩」

 呼び止められて、振り返る。

 顔を赤くした後輩の女の子。胸の前には可愛らしい袋。

「好きです! 付き合ってください!」

 思い切ったように、ぼくの胸に袋を押し付ける。一瞬フリーズして、思わず言う。

「マジ? ここ、女子校だよ? 君もぼくもーー」

 女の子は残像が見えそうなくらいに首を縦に振った。

 ぼくは袋を受け取った。

 顔が、信じられないくらいに熱かった。

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