　うちの庭には、カエルの像が1つだけある。たまに窓からその像が目に入ると、子供の頃の事件を思い出す。

　子供の頃、うちの庭には大きなカエルが住んでいた。いつも金魚鉢の下にいて、それはもうデカかった。のそのそ歩く姿を見ながら、この庭の主だねーって、お母さんと話していた。

　ある日、家の前の道路で、その庭の主が死んでいた。車に轢かれてぺちゃんこで、小学生にはショッキングな感じに仕上がっていた。お母さんも僕も非常に残念がった。自動車を恨み、愛知県に生まれたことすら呪った。

　それから、玄関先にあったカエルの像2つのうち、1つがどこかに行ってしまった。これまでは何度か消えても、すぐに戻ってきていたのに。

　その像は、今思えば、例の庭の主とよく似ていて、大きさも同じくらいだった。

「あれ、石化の呪いをかけられたカエルだったのかもね」

　かくして僕は、いまだに自動車免許を持っていない。

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