覗く子
空に、巨大な赤ん坊の生首が浮いている。
我々は彼のことを「覗く子」と呼んでいる。
覗く子は昼の間、この世界を見つめている。たまにあくびをすると強風が吹き、看板や植木鉢が吹っ飛ぶ。
そして眠る。
すると世界は見られていないのをいいことに好き勝手に暴れ始める。
秩序は崩壊する。
街中にはゾンビが溢れ出し、怪獣が出現し、チェーンソーを唸らせた殺人鬼が徘徊する。夜空には巨大な宇宙船が飛来して、怪獣に向かってビームを放つ。魔法陣が出現し、巨大ロボットが歌い出す。
覗く子が目を覚ますと、秩序が戻ってくる。全部元通り。それまで我々は、ぐちゃぐちゃの世界で生き延びねばならない。
けど、もう終わりだ。
目の前には大口を開けた肉塊。5秒後に私は死ぬ。目を閉じると、頭蓋骨が削られる感覚と激痛。叫ぶがどうにもならない。
全身を襲う寒さに、私は安堵を感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます