ゲームの神様

 今日も彼は来ている。


 毎日夜遅くまで、近くの洞窟で狩りをしている。目的は、一部のモンスターからのみ、低確率でドロップする稀少なアイテム。このゲームにおけるやり込み要素みたいなもので、そんなに高価がついているわけでもないのに。


 彼は洞窟から出てくると、近くにある小さな祠に跪く。そして、例のレアアイテムを奉納していく。


「…お願いします」


 彼は言って、ゲームを閉じる。


 その様子を、私は祠の中から見ている。


 私は、このゲームの、祠に宿った神。


 ゲームのオブジェクトだろうと、データ上の存在だろうと、信じるものがいれば神は宿る。現に私は存在している。

 

 彼の事情は知っている。

 心に傷を負っている彼は、自分の部屋から出られない。

 だからこうして、せめてゲームの上で、私に祈っている。

 自分のためでなく、人のために、彼は毎日、祈っている。

 

 応えてやらねば。

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