119番
ある夜、119番通報がありました。自宅で首を吊ろうとしたが、死に切れなくて苦しいので助けて欲しい、という内容でした。
救急車が向かった先は、廃墟となったアパートでした。明らかに、人が住んでいる様子はありませんでしたが、一応、救命士たちは、指定の部屋を確認しました。案の定、誰もいませんでした。
救命士たちは愚痴を言いながら病院へと戻りました。
1週間後、また119番通報がありました。先週と同じ住所で、同じ内容でした。
受話器を取った指令員。悪戯はやめてください、と言うと、電話口の声は苦しそうに言いました。
「嘘じゃありません。先週もかけたのにどうして助けてくれないんですか。首が伸びてーー息が、できないんですーーくるしいーーいっそころしてください」
後半は雑音混じりでした。
「残念ですが、我々にはあなたを助けることはできません」
指令員はそう言って、電話を切りました。
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