現代ファンタジー

 駅前で、女性が喚いている。


「この世界にも呪いはあったのか! おい、どうしてお前ら見て見ぬふりをしているのだ! 早く上級魔法使いを呼べ!」


 女性は金髪で、露出度が異様に高かった。背中には大きな剣を背負っているように見える。恥ずかしくないのだろうか。


 そして指差しているのは、静岡駅の待ち合わせスポット、竹千代君像だった。


「あ、こっちにも!」


 今度は徳川家康像に走っていった。僕は墓参りに行く途中だったので、無視して改札へ向かった。

 

 墓参りは滞りなく終わったが、帰ろうとしたところに、また変なのに会った。


「ここはどこだ。なぜ、わしの墓がーー」


 男はそう呟いて、墓の前で立ち尽くしている。腰には脇刺し。袴にちょんまげ。こっちはタイムスリップか?

 僕は男の視界に入らないよう、立ち去った。

 

 現代社会にも、意外とファンタジーが紛れ込んでいるのかもしれない。

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