地に足をつけて…

 母の最後の言葉は、『地に足をつけて生きていきなさい』だった。

 男はその言葉を守るため、一将懸命に努力した。学校の成績は1番だったし、一流の大学を出て、有名企業に勤める立派な大人になった。

 しかし男は、このままだと母の言葉を叶えられないことに気づいた。男は勉強と仕事はできたが、バカだったのだ。


 それからは、思いつく限りの悪いことをした。人に暴力を振るったり、殺したりすること以外の。

 その努力が実り、男は捕まって裁判にかけられることになった。

 裁判の結果、男は流刑となった。


 ロケットの座席に括り付けられ、飛ばされた先は、まさに、男の目的地。

 地球だった。

「月にいたんじゃ、重力が弱くて、地に足をつけられねえもんな。オレはここ、地球で生きていくぜ、母さん!」


 地につける足がなくなった天国の母は、『そういう意味じゃないんだけど』とため息をついた。

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