●atone-22:迅速×エルフェンバイン
小降りとなってきた
<なんで、目標を速やかに殲滅しないの……?>
何故か掠れたような、静かなる御声が場に
先ほどまでは「黒い球体」に油断を喰らって往生していた私だけれど、今は「白い球体」に、失策を真綿で締めるが如くに責められようとしているよィヒィィ……
鋼鉄兵機、『ヴェロシティ』。白く、何の飾りも無い滑らかな表面を持つ球体が本体で、その下部から五十本ほどの細く鋭い、関節をひとつだけ持った「脚」が無秩序に生えるように突き出た、異形中の異形。夜道で出くわしたら、間違いなく大声が出る容貌だ。大きさはジェネシスの半分くらいで、奇しくも先ほどの「黒球」とほぼ同じ直径かと思われたけど、放ってくる
操るは、エディロア・ルーピー
<なんで、敵と戯れているの……?>
分かってて問うてることは、痛いほどに分かるけれど、はっきり怖いよぉぅ……何年経っても慣れないその相手を内部からボロボロにしていくような独特の威圧感に、私は援軍割けないとか言ってたくせにぃ……と、
さ、サセンシタァァッ!! と、もう即応で謝っておいた方が諸々済まされるんではないか的思考に則り、私は即座に立ち上がらせた
「……!!」
充分な間を持って、上体を上げた私の視界には、ヴェロシティの傍らに団子が如くその鋭利な「脚」に身体を貫き通された、先ほどまでの「目標」たちが、無言のまま転がっているのが否応無しに差し込んでくる。えええ……瞬殺必殺してるよぅ……よく見ると
<後処理を、頼みます>
静かながら有無を言わさない口調でそう言い、エディロアさんは
違和感。それは、
転がっている「黒い球体」の多寡であったわけで。
私のそばにひとつ、視界の先に四つ。計五つ。
……ひとつ足りない。
慌てて建物間の陰から身を乗り出しつつ、辺りを見回すけれど、やっぱり骸は五つ。もう一匹は……? と、慌てて
「……!!」
ひとつの光点が、私から見て「八時方向」へと向けて、転がる速度での移動を続けている……っ!! 何でいち個体だけ、別の挙動を示すのっ? 今までそんなこと無かったのにぃ……ッ!!
<……アルゼ?>
振り向いた(のかどうかは分からないけど)
<一体、残ってますッ!! 私がッ!!>
ぐり、と180度
<……!!>
何か言ったであろう上官の
失策を挽回しようとか、そんな殊勝な気持ちはさらさら無かった(と言い切るのも何だけど)。ただその「八時の方向」に。
「……おおおおおッ!!」
避難をしているだろう、
自らの体内で発生させて練り上げた、エネルギー純度の高い(はず)「光力」を、惜しみなく注ぎ込みながら。機体はそれに応えて急激に加速していってくれる。
「……」
自分に、冷静に冷静によぉ~と言い聞かせながらも、次々と眼前に迫る建物を、腰上くらいの高さの物ならばその上空を、右脚を伸ばし振り上げ跳び越え、左脚は障害にぶつけないように膝・足首を直角に曲げて腰上まで引き上げて跨ぎ越し、
目線より上の構造物なら、その直前で両足を地面に叩きつけるようにして踏み切り、両腕を突き上げ、勢いよく
青い葉を茂らす街路樹のひとつをなぎ倒してしまいながらも、
待っててアーヌ……っ、絶対に危険な目には合わせないからっ!!
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