●atone-20:屈折×カルミン
<……目標六体の動きが定まらない。西方向へと進路を変えている。対応しろ>
そんな定まらない思考の私の耳に入って来た、無感情な上官が入れてきた通信に、ええっとなるけど、この高校を狙ってきたわけじゃないの……? 奴らの読めない指向性に、若干の違和感を抱いてしまう。
いやまあ、あまり思考は無い奴らなのかも。先ほどの「白銀」もまあ、そこまでの賢さは持ち合わせていなかったようだし。もう来るかな、と大通りの先をずっと見据えてはいたものの。徐々に濡れ始めた路面は、灰色の雨雲から透過してくるわずかな光を静かに反射するばかりなのであった。
待ち伏せ大作戦(というほどのもんでも無いけど)はあえなく瓦解……でも落胆とか焦燥とかはせずに次の一手を冷静に放っていかないと。私は気分を入れ替えるためにいったん息を止めて、耐え切れなくなったところで一気にぶはっと吐き出す。
苦しいところに清涼な息吹が吹き込まれたようになるから、すっきりとスイッチが入れ替わるんだ。これが私のお手軽リフレッシュ法……さて。
周囲の「生命力」の多寡と座標を表示してくれる、便利な「機械」だ。どういう仕組みかは分からないけれど。いや、機械を操縦していながら、その機械はとんと疎いという残念な私が単に分からないってだけじゃあなく、
「現在科学」の粋を極めた「リ科大附属研究センター」でも、それは解明不能なのだと言う。
「イド」が現出し、そして然るべき方法により「
汚泥のような黒い「粘体」に包まれて出土してくるのが、これら「機械」だそうだ。「出土」に立ち会ったことはないから聞いた話ではあるけれど。
手の平サイズの小さな「電灯」から、時にはこの
今の技術じゃあ、鋼鉄兵機においては、
さらにこの「ジェネシス」ともなると、まるまるこの「個体」全部が未知だそうで。何十年か前に、とある巨大都市地区を呑み込んだ「最悪のイド」……「
そして地区の数少ない生き残りのひとりである、船舶製造業を営むひとりの青年実業家が、私財を投げうってその「巨穴」から、すべての「埋蔵品」を引き上げたのであった。そこからどう流れて私の所属する「
今では私のかけがえの無い相棒だ。戦時でない時もずっと一緒に訓練を行ってきた。だから心配はしてない。まあ先陣きっての出動なんてほんとに十何年ぶりだったからどうなるか不安だったけれど、いま、私の心中に
「あの時」のように繋がっていることを感じている。私と、このジェネシスが。もちろん言葉は通じないというか、そもそも感情もそれを伝える手段も持たないだろうこの「鉄の騎士」と、それでもこちらから光力を流しいれ、それに対しこちらの投げかける操作に、挙動というかたちで応えてくれる……
それを、対話のようにどこか楽しんでいる私がいる。そんな場合じゃないかもだけれど、「対話」を通すことで、私たちは
左の操縦桿越しに、深緑色画面に表示されているこの機体周辺のフレームだけの簡易的な地図と、その上を動く「光点」に目を走らせる。目標は……六体。報告通り。ん……でも、その南西方向に移動するその速度が、やけに速いように感じられた。報告と違ぁうっ。
私のいまいるここからは、10
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