12 東の国の邪神皇女
相変わらずアシュリーの教え方は上手かった。秋月はそれを称えると彼女は眼を丸くして驚いた様子だった。当然と言った感じに不遜に笑っていたが、徐々にテンションが上がりだし、秋月の指導に熱が入り始めてなかなか解放してくれない。秋月は褒めるんじゃなかったと少しだけ後悔する。オマケに小柄なメイドはずっと無表情でこちらを見ながら立ち尽くしているし。正直、怖かった。
漸く解放されて、秋月はランプに照らされた部屋で読書に勤しむ。正直、寝てしまいたかったが、少しでも知識を詰め込みたかったので椅子の上で体育座りするようにして本を読む。そんな秋月をメイドが離れた場所で見つめている。雑用を終えて、もう部屋に戻る頃合いだ。しかし、メイドはこちらを気にかけている。先程の事を気にしているのかと思ったが、あの後、すぐに態度が戻っていたし別段気にしてはいなかったはずだ。何かあるのかと思ってちらりと視線を向けるが、先程のみたいに拗れても困るので秋月は敢えて何も言わず本に没頭した。
しばらくしてメイドは部屋の外へ出て行った。
翌日も秋月はメイド相手に本の内容をアウトプットする。メイドは逃げずにすんなりと受け入れてくれた。正直、また嫌な顔をされると思っていたから意外だった。
本の内容を言い終えて、秋月は流石に疲れが溜まったのか身体のダルさを覚える。
そんな秋月の様子に気づいたのかメイドに心配される。
「アーロン様、どうしてそこまで頑張るのですか?」
揺れる瞳は不安の色に満ちていた。
何故頑張るなんて決まっている。何もしなかったら破滅が待っているからだ。だから、行動を起こすしかないのだ。何もしなければチート勇者に殺される運命にある。
そんな事言えるはずもなく、秋月は答えらずにいた。
「そうするしかないんだよ」
苦し紛れにそう答えた。何の答えにもなっていない。
それなのにメイドは何故か「そうですか」と勝手に納得するように、
「真剣にエドワード様と対峙するおつもりなのですね」
と呟く。
「は?」
秋月は呆けた声が出る。エドワードと対峙する? 何を言っているんだこのアホは。
「わかりました。僭越ながらこの私に出来る事があればアーロン様のご助力致します」
吹っ切れた様子で言ってくるメイド。
何を勝手に納得して変な勘違いしているんだよ。このメイド。秋月は悪寒で背筋が寒くなる。
秋月はこのメイドが変な事をしでかさないか気が気でなくなった。
東の国、アーロンの父であるオズワルド・ラングフォードは畳の部屋にて正座していた。
襖が開き、和服を纏った男が現れた。
「遅れて申し訳ございません」
そう和服の男が謝罪する。
オズワルドはそれに対して「いえ、大丈夫です」と謙遜した。
和服の男は畳の部屋へ入ってくる。その後に続くように少女が入ってくる。綺麗な黒髪に桃色の着物を纏った少女。
オズワルドは少女に目を奪われる。幼いながらも美しい容貌をしており、また彼女は左目を手で覆っていた。
和服の男がオズワルドと相対して座り、その隣に少女も正座する。
オズワルドは「彼女が?」と和服の男に尋ね、和服の男が肯定するように頷き、
「この娘が私の娘のレイラです。レイラ、自己紹介を」
俯いていた少女は畳に頭を下げて、ゆっくりと顔を上げる。
「レイラ・神無月です」
そう淡々とした声で答えた。
無表情でありながらも整った顔立ちをしている。
しかし、彼女の左顔は黒く爛れており、その左目は邪悪な獣のように赤い瞳が怪しく光る。
邪神の生まれ変わりと言われている少女であった。
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