3.初練習。







 競技における魔法戦というのは、ある一定のルールに基づいて行われる。

 まず基本的なところから上げれば、一チーム八人構成であること。そしてその中でも前衛を務めるアタッカー、いわゆる攻撃魔法専門が四人。支援魔法を専門に使用するサポーターが四人、という人数制限があった。


「えっと、今回はアーニャがサポーターで私がアタッカーだね」


 僕はひとまず、フォーメーションを確認しながら言う。

 そして二つ目に勝利条件。主に二つあり、一つは各本陣に設置されているフラッグの奪取。もう一つは、制限時間が経過した時、あらかじめかけられていた防壁魔法の効果が残っていた人数によるものだ。

 防壁魔法というのは、協議委員会の魔法師によって付与される特殊なもの。

 選手を保護するものであり、ダメージが蓄積されると解除される。その場合に選手は競技続行不可能、つまりは脱落となるのだ。


「ルールは、ひとまず良いかな?」

「うん。とりあえず、相手選手を倒してフラッグを取りに行けばいいんだね」

「そういうこと。ただ注意なのは、専用のフィールドでのフォーメーションだね。相手も連携を取ってくるから、無闇に突っ込めばすぐやられちゃうよ」

「なるほどです……」


 アリーシャの説明を受けながら、僕とアーニャは頷く。

 なるほど。なかなかに難しそうではあった。


「でも二人は、今回が初めてだからね! アタシたちがサポートするよ!」

「分かった! それじゃ、さっそくお願いするよ!」


 でも、やるしかない。

 アリーシャの元気な言葉に僕は立ち上がった。

 専用のローブに着替え終わり、他の部員の人たちに挨拶をする。そしてついに、最初の練習が開始されるのだった――。



◆◇◆



「くあーっ! 思った以上に疲れるね!」

「お疲れ様です、フィーナさん。私は後衛なので、そこまでですけど……」


 ――で、一通りの練習を終えて。

 僕は練習場のただ中で、大の字になって倒れこんだ。

 一応これでも男子なので、年下とはいえ体力では負けないと思っていた。しかし実際に動いてみると、頭も使うし身体も使うし、魔法を放つときには集中しないといけないし。つまりは、色々な状況判断が必要で――すっごく疲れた!!


「この調子で大丈夫なのかなぁ……?」


 僕は身体を起こし、アーニャから水を受け取りつつそう口にする。

 すると、そこへイザベラ先輩がやってきた。


「大丈夫だと思うわ。貴方、思ったよりも筋が良いから」

「あ、本当ですか?」


 そして、僕とは対照的に涼しい顔でそう言う。

 彼女とは先ほどの練習で何度か戦った。結果としては、当然のように惨敗。それでもイザベラ先輩は、こちらを馬鹿にする様子はなくこう告げた。


「きっと、競技を続ければ私よりも強くなる。そう思うわ」

「あ、あはは……」


 もっとも、それは性差による身体能力の差だと思うけど。


「ところで、二人とも。この後、時間あるかしら?」

「ん、どうされたんですか?」

「なんでしょう?」


 苦笑いしていると、不意に部長がそう訊いてきた。

 こちらが首を傾げると、彼女は淡々と続ける。


「もしよければ、一緒に街に買い出しに行けないかと。競技に必要な物も買わなければならないし、親睦を深める意味でも、ね?」

「あぁ、なるほど。そういうことなら! いいよね、アーニャ」

「はい! 是非、お願いいたします」


 しかしその提案は、こちらとしてもありがたいものだった。

 競技についても聞けるし、不安な点は相談できる。そんなわけで僕とアーニャは練習後に、イザベラ先輩と街へと出ることになったのだった。



 

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