第3章
1.学園生活始まって、最大のピンチ。
「なんとか、バレないで生活できてるなぁ。これもアーニャのお陰か」
「いえいえ。私は少しでも、お友達のためになりたいと思っているだけです!」
かれこれ一か月が経過して。
体育の授業などはアーニャに助けてもらいながら、どうにか学園生活にも慣れてきた。いまのところアーニャ以外にはバレていないし、彼女は口も堅い。
順調といえば、順調というところか。
最初は嫌々だったものの、朱に交われば、というやつかもしれない。
いや、女装していることだけは嫌なんだけどさ。
「そういえば、フィオくん?」
「どうしたのアーニャ」
「もうじき、始まってしまうのですが……」
「始まる、って何が?」
「えっと……」
「……?」
僕が首を傾げると、どこか申し訳なさそうに彼女は言った。
「えっと、身体測定……です」――と。
両者、同時に足が止まる。
「………………」
「………………」
風が吹き抜ける。
僕は真顔で、空を仰いだ。
◆
――ヴィヴィアンヌ女学園の身体測定は、年に一回行われる。
調べるのは身長、体重、視力など一般的なもの。しかしながら、問題はここが女学園である、ということ。男の僕では知り得ない何かがあるかもしれない。
そう思って調べた結果、やはりそうだった。
「下着姿で、測定……だと……?」
寮の部屋にて。
僕は今週末に行われる身体測定のパンフレットを見ていた。
するとそこに書かれていたのは、下着姿で測定を行うこと、という文言。これは普通の学園ならあり得ないだろうが、ここは女子だけのはずの場所だ。
すなわち本来、警戒される場所ではない。
事ここに至って自分が異分子だと、痛感させられた。
「どうすんだ、おい……!」
ベッドに寝転がり、のたうち回る。
――どうする、どうするどうするどうする!?
全身から冷や汗が出る。
このままでは、自分が男だということがバレてしまう。
そうなれば家の問題だ。前代未聞の出来事。最悪の場合――取り潰し!?
「お、落ち着け。どこかに抜け道があるはずだ……!」
焦るな。まだ、慌てるような時間じゃない、はず……!
そう自分に言い聞かせるけれども、いっこうに解決策は浮かんでこない。そして刻一刻と、時間だけは過ぎていった。
学園生活最大の壁にぶち当たって。
「う、うぐぐ……!」
僕は一人、枕に顔を埋めるのだった。
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