第4話 スタンピード
「ギィギィー!」
ラクナは襲ってくるゴブリン目掛けて素早く剣を振り落とす。
同時に目の前のゴブリンの頭も切り落ちるた。
そして流れてくる温かい力、経験値がラクナをどんどん強化させる。
―25、、次!
ラクナはゴブリンに囲まれる中、息継ぎをする余裕もないまま剣を振るっていた。
ラクナが雑魚のゴブリンやコボルトを切り、お爺ちゃんが大型のオークやオーガを蹂躙しながらスタンピードの中心へ向けただひたすら進む。
まさに一騎当千の活躍、万という魔物の群れは物凄い勢いで削られていた。
+++
―ウェポンスキル、
「<ソニック・ブレイド>!。」
襲い掛かってくるゴブリン・ソルジャーへ向け、ラクナはウェポンスキルで切断した。
そして、単発ウェポンスキルのクールタイムを無視して、死角から奇襲をしようとするコボルトへ向け、もう一度<ソニック・ブレイド>を発動し、数体のコボルトを同時に切断。
取り敢えず、周りの魔物を一掃し終わり、息を整えようとした時、
シュパッ
「もう一体潜んでたぞ、油断するな」
「ごめん」
ラクナは魔物の死体の影に隠れていた、ドッペンゲンガーの死体を目にしながら、歯を食いしばる。
―あと、ちょっとで殺されるところだった。
「左側が騒がしい、一気に突っ込むから背中から離れるなよ」
ラクナはお爺ちゃんの真後ろで剣を構える。
「<ボルテックス>、<メガ・ブレイド>」
―すごい、、、スキルの二重発動だ、、、、
お爺ちゃんの体が黄金色に光り、青い刃が数倍膨れ上がった途端。
ラクナが見つめていたその背中はいつの間にかずっと先の方にあり、目の前の地面は一直線に大きく抉れていた。
―何十体、嫌、何百体を一瞬で倒したんだろう、、、
ラクナは血でドロドロに染められた一直線の道をひたすら進みながら既にオーガの群れと剣を交わしているお爺ちゃんの元に向かう。
「背中から離れるなって言っただろう!」
「無理だから!」
そんな軽い冗談を言い合いながら、ラクナはオーガの背中を素早く駆け上り、自分の腰ほど太いオーガの首を剣で一捻りする。
首を斬られたオーガはラクナが地面に着地した頃には首から恐ろしい量の血を放出しながら絶命していた。
「大したものじゃねえか」
「経験値を一杯もらったからね」
「そうか、お前ならもう職業は剣豪ぐらいになっているのかもな、、、」
「職業?」
「何でもない、集中しろ。次のがお出ましだ」
+++
オークの群れを血祭りに上げた後、ラクナは少し離れた所にゴブリンに囲まれた馬車を見かける。
―なんでこんなところに馬車が?あれは人?
「お爺ちゃん、誰かが中に!」
「チッ、見るからにどこかのお姫様だな」
―お姫様?人の名前かな?
ラクナは聞いたことがない言葉に首を傾げながら、お爺ちゃんを見上げながら訪ねる。
「どうする」
「助けるぞ」
+++
「お爺ちゃん、大丈夫」
「大丈夫に決まってるだろ!俺は最強だ!」
馬車を囲むゴブリンを全滅し、馬車から気を失った女の子を救出した後、女の子をおんぶしているラクナはお爺ちゃんの背中に引っ付ぎながら、足を進めていた。
「この紫色の髪の女の子は誰なの?」
「そんなのはどうでもいい、とにかく俺の背中から離れるな」
お爺ちゃんは息を「ゼーゼー」させながら剣をひたすら振り回す。
どうやら、どんなに強い人間でも歳と疲労には勝てないようだ。
―それにお爺ちゃんの魔力も、、、
そんなお爺ちゃんの苦しい姿を見て心配し始めたラクナはお爺ちゃんの鎧の隙間から滲み出る血を発見する。
―、、、あれは魔物の血だよね
+++
「な、ん、とか、出れ、た、な」
「そう、だ、ね」
お爺ちゃんとラクナは全体が血で染まった体をタオルで拭きながら地面にドスンと音を立てながら座り込む。
少し先の草の上に横たわる女の子を一見した後、ラクナはお爺ちゃんみたいに殆ど形を保っていない鎧を脱ぎ取った。
「疲れたね」
「あぁ、、、、」
ポツンポツン、、
鎧を脱いだお爺ちゃんの体から聞こえてくる音にラクナは敏感に反応する。
「え、、、お爺ちゃん、その血は!」
「ちょっと、この剣を、預かっていてくれ」
お爺ちゃんはそんなラクナの焦り具合とは反対に冷静に剣をラクナに渡した後、地面の上で突然、横になる。
顔を見てみれば、お爺ちゃんの目には光が失いかけており、手は枯れ木の様に腐り始めていた。
―え、やめてよ
「この剣の、名は、アニマメア、
―そんな、やっと元気になったのに
「そして鞘の名は、インフィルミ。」
―この後、また稽古をつけてくれるんでしょ
「少し、小難しい剣だが、」
「駄目だよ。え、やめて。やめて!また、オリジナルスキルを教えてくれるって!!」
「志を、示せば、自ずと力を、、、」
「お爺ちゃん!ダメぇ!目を閉じないで!」
「大袈裟だ、な。ちょ、っと、昼寝、を、する、だけ、だ」
ラクナは温かみを失っていくお爺ちゃんの手を握りしめながら涙声で叫ぶ。
そんな鼻水と涙で汚れたラクナの顔を優しい表情で見つめながらお爺ちゃんは小さく呟いた。
「ラクナ。弱い「俺」が悪い、、、、、俺が、悪、、」
っと言い終わる前にお爺ちゃんは目を閉じ、
そして再びその空色の瞳を開くことはなかった。
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