第3話

乱雑になっていたテーブルと椅子を集め、全員が座り情報交換となった。


大鎌とショットガンの使い手・ダナイ

その相方、円月輪とナイフの使い手・チューン

東国の二刀流・シュンライ

地獄の鉤爪の使い手・ジャシ

元大国ルリエンフェルの騎士隊長で槍の使い手・ゾノ

チューンの妹で魅惑の踊り子・リューン

その相方、電雷の棘鞭の使い手・キシリア

そして

異端の魔法剣士・ファイナ

その相方、大剣の使い手・ジーク


世界中のハンターに彼らの名前を知らないのもはいない。

それほどまでの凄腕と言われる者たちが、今ひとつの地図を囲んでいる。

ダイナとチューンは変わらず革のソファーに座り、ダイナの右側にゾノが腕を組み、顎に手を添えている。

チューンの隣の椅子に、チューンとはまた違った妖艶さの笑みを浮かべリューンが座り、その横にキシリアが神妙な顔をして地図を見ている。

それに続きジャシが器用に小さな丸椅子の上に両足を抱える形で座り、地図を覗く。

そしてシュンライ、ファイナ、ジークが全員の話を聞きながら地図に印をつけていく。

印は7つ。

それはどこかの大陸に多くあるわけではなく、全ての大陸に散らばっていた。

「こんなにもあるなんて…」

「ハンター同士の接触があまりにも少ないが故に、情報も噂でさえも、なかなか耳には届かないからな。」

「ギルドは確実に把握していたと思うが…」

シュンライの言葉にガドをみやるが、問うた所でギルド内のしかもギルド側の情報なぞ、聞かせてはもらえないだろう。

所詮どんな凄腕であっても、ハンターはハンターで、ギルドの言われるままに獲物を狩るだけの存在なのだろう。

顔に感情の出やすいジークは、眉間に深くシワを寄せ、苦虫を潰したような顔をしている。

「しかし一体誰がやっているんだっちかねぇ…」

ジャシが少し人より長い腕を動かし、頭をかきつつ言う。

それには誰もなにも答えられない。

不思議なことに噂にもならずそこに存在しているのだ。

いつ誰が何の目的でやっているのか、何一つとして分からない。

「見たって言う情報だけで、他に手がかりは誰も持ってねぇとなると、何から始めりゃ良いのか全くわかんねぇなぁ。」

ガドがお手上げだと言うように、酒を一口口に含む。

「騎士仲間に話を聞いてみたが、こちらにも全く分からなかった。」

ゾノが腕を組変えるだけで、彼の鎧たちが派手な音を立てる。

ハンターとしてはかなり珍しい重装備だが、彼はこれでなければ力を出せないのだと言い、それを聞いたものの中には「実は痛みに弱いのではないか」等と陰口を叩くものもいるが、ゾノ自身は気にもせず、自身を貫いている。

この姿が彼の誇りなのだろう。


「私の村の婆様に会いに行くのはどうかしら?」

突然そんな提案をして来たのはリューンだった。

チューンはその言葉に意味ありげに口許で笑う。

このジャナより南に30キロほど行ったところに、ヤナイという村がある。

そこがチューンとリューンの故郷である。

オアシスに隣接するようにあるこの村は、古の伝統を守り、古と変わらぬ生活をしている。

「婆様って、リューンがいつも話している村の占い師のことよね?」

相方のキシリアが確認するように聞くと、リューンは頷きながら「何か分かるかもしれない」と返した。

その言葉に誰も返答できなかった。

全員が己のみを信じてここまで上り詰めてきたのだ。

それてこれからも変わらず、己の力を信じ戦っていく。

それが彼らのプライドである。

よってリューンの言葉は、彼らの反感を持つものであった。

結果沈黙が返事となってしまった。

「…やめな。私たちはハンターなの。助言なんていらないわ。」

沈黙を破り、チューンは口許に変わらず笑みを浮かべべたまま、リューンの言葉を否定した。

その視線は冷たさを秘めており、その視線にリューンが体を強ばらせる。

お互いに上位のハンターになってはいるが、その強さを比べればチューンの方が遥かに強い。

そして、チューンにはリューンにはない、冷酷さがある。

仕事となれば妹であっても容赦はしないであろう。

その冷酷さを知っているリューンは、何も言えなくなった。

「いや、行ってみる価値があるかも知れねぇぞ」

そう言ったのは、まさかのダナイであった。

チューンは相方の言葉に驚き、絶やさなかった笑みさえも消え、ダナイを見つめている。

その視線に気づきながら、ダナイは続けた。

「占いを聞きに行くんじゃねぇ。あそこは昔の記憶が残るところだってことだ。」

「…あ、前にも同じようなことがなかったか、調べるっちことか?」

ダナイの言葉の意味を、ジャシが答えた。

相変わらず器用に両膝を抱えながら小さな丸椅子に座り、頭をかく。

そして少し困った顔をしながら「俺っちはあの村はチビっと苦手で…」と遠慮がちに呟いた。

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