5-1

生い茂る草木の合間を流れる川。地形は隆起し、崖があり、滝も見える。遠くには連なった山脈の尾根が見える。


火星の地下は引きで見ると地球のような光景だが、よく見ると違った。


高木は地球のように広葉樹や針葉樹でもない。葉の付き方から見るにシダ植物だ。また、川底の砂礫はやはり赤みを帯びている。山脈は非常に高い。恐ろしいほど高く急峻だ。


「地下にこんなものがあるなんて――やっぱりそうか」


穴を見つけてから、うっすら星人の頭によぎっていたのは、地下世界の存在だ。そんなはずはないと思いながら、考えざるを得なかった。そしてここへ来て確信に変わる。


あの空き缶は地球のものではなかった。地球から飛んできた物と考えるより、火星で作られた物と考える方が、遙かに自然だった。火星の文明のことだ。火星人があの缶を作ったということだ。


空き缶を見てからその考えは浮かんでいたが、その時は馬鹿げたことだ、地球からも火星の表面は観測できるし、年々観測技術も上がっている。無人の探索機だって火星に到達しているし、人工衛星だってある。火星の裏側を見ることだって容易だ。それでも見つからなかった火星の文明の存在を、肯定できるだろうか?


しかし大穴を見たときに話は変わった。火星の地下は探索機では分からない。大地を掘り当てるようなリソースを無人の宇宙船に乗せることはできないからだ。火星人が掘ったと思われる大穴もあるかもしれないが、あのカムフラージュのされ方では、見落とすかも知れない。


火星人はいる、と星人は確信した。大穴は綺麗な円筒形をしていて、梯子も付いていた。あんなものが自然に作られるわけがない。


「だけど、警戒しないといけないかもな」

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