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僕はセンターの中から出る前に用を足そうと思った。いつもとは全く違う環境、いつもは全く接しない種類の人たちに囲まれていたのが悪かったかも知れない。どこにトイレがあるか聞かずに、なんとなく探せば見つかると思ったが、結果的には迷ってしまった。
訳の分からない機器ばかり、触れて運悪く壊してしまうとどれくらい弁償しなければならないだろうか――そんなことを思いながら迷い、迷って、なんとスペースシャトルの中に入ってしまった。
乗組員達が固唾を飲んでいた。歴史的な瞬間に備えて目を閉じている。この日のために日夜厳しいトレーニングや勉強に明け暮れていたのだから、緊張しているのだろう。装置の機械音の方がやかましいのに、彼らの心臓の音がうるさいほど聞こえた記憶がある。彼らの中には当たり前だが僕の父親もいた。僕は空気に圧倒され、声を掛けるのを尻込みしてしまい、自分で出口を探そうとした。父の目の前を抜き足で通り過ぎたとき、その瞼がぱっと開いた。驚きの表情があった後、苦い表情に変わり、小声で囁いた。
(――っ!お前なんでこんな所にっ!だっ、駄目だ。やっぱり喋るな!ここに人が入ったことがバレたらエラいことに……。最悪中止なんてことになったら……。それにもう、あっ……)
エンジンが唸りを上げた。爆音に耳が裂けそうになる。その音でようやく父親も我に返ったのか、他の乗組員の助けを乞う。予備の宇宙服が僕にあてがわれた。
「おい、
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