異世界じゃなくて火星に転生して、モテた

朝楽

1-1

僕がどうして火星で置いてけぼりを食らったかというと、話は長くな――いや、ならない。普通の男子高校生が火星に放置されたというと込み入った話があるんだろうなと思うかもしれないけど、まぁ、言ってしまえば簡単である。一文で終わってしまうほど簡単なのである。要は、


――運が悪かったのだ。


とはいえこれから火星での僕の生活の話にすぐさま移る訳にもいかないだろう。ちゃんと経緯を話しておかないとだめだ。そんなことをしたら今度は読者が置いてけぼりになってしまう。置いてけぼりを食らうのは僕だけで十分だ。


前置きはこのくらいにしておこう。とにかく、僕は家族旅行でケープカナベラルに来ていた。ケープカナベラルというのはアメリカ合衆国のフロリダ州メリット島にあり、アメリカ航空宇宙局、いわゆるNASAの施設、ケネディ宇宙センターがある所だ。


僕の父は宇宙飛行士だった。はじめての火星有人宇宙飛行。ついに歴史が変わる打ち上げのその日に、僕と母は見送るため宇宙センターに来たというわけ。報道陣の群れをかき分けて(僕もインタビューも受けたりした)近親者権限でセンターの中に入れてもらえた。


ここで僕が一つミスをするが、まさかそのミスがこんなことに繋がるなんてその時点では思いもしない。

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