第6話 決闘
「この方々と戦ってはいけません。彼らはやむにやまれぬ事情があって私たちを襲ったのです。今は彼らにもう戦意はありません」
それを見た他の
俺は
「どういうことだ?」
「こちらの
そこに俺たちが通りかかったってわけか。
フンッ。
弱肉強食の世界だ。
弱い奴は
別に
だが、気に入らねえな。
俺は
さっきの戦闘で分かったが、この
空の上であれだけ戦えるなら、主戦場である海の中ではもっと強いはずだ。
「おまえの腕ならこの大ダコを倒すことも難しくないはずだ。なぜそうしなかった」
俺がそう
足場を失った俺は羽を広げて海上に浮かんだが、そんな俺の足元の海面にいくつもの小さな人影が
それは消えた大ダコの代わりに現れた小さな子供の
ガキどもは気を失っているようだ。
波間に漂うその
一体何なんだ?
首を
「あの子たちは
チッ……そういうことかよ。
家族だの仲間だのを持つ奴の気が知れねえ。
弱点になるだけじゃねえか。
白けた気持ちで俺が見つめる先、
「ハッ。馬鹿馬鹿しい。行くぞティナ」
俺はすっかりやる気を無くしてその場を去ろうとしたが、そんな俺たちに声をかけてきたのは
「待て。おまえたち、恩人。礼、受け取れ」
「別に助けたわけじゃねえ。勝手に恩人扱いすんな。礼がしたいなら、俺と一戦勝負しな」
「ちょっ……バレットさん? 何言ってるんですか?」
「理由はどうあれ、てめえらは俺たちを攻撃した。ガキを人質に取られてた? そいつは気の毒だな。だったら仕方ねえ……とでも言うと思うか? 言うわけねえだろアホが。落とし前をつけろ」
「お、落とし前って……もういいじゃないですかバレットさん」
「おまえは黙ってろ。おい
俺の言葉に
代わりに仲間の
それを受け取った
「空でもなく、海でもなく、地に足をつけて相手をする。戦士の誇りにかけて」
そう言うと
それについていこうとする俺の手をティナの奴が握った。
「バレットさん。こんな戦いに意味があるんですか」
「黙ってろティナ。それが分からねえ奴に口出しをする権利はねえよ」
俺はそう言うとティナの手を振りほどいて岩場へと向かった。
岩に囲まれたそこは真ん中の部分が円形の浅瀬になっていて、広さは直径20メートルほどだろうか。
そこに降り立つと足首の辺りまでが海水に
「我が一族の決闘の場」
なるほどな。
こいつらにとっちゃここは神聖な場所なんだろうよ。
俺は胸の前で右手の拳を握り締めた。
「ダラダラやるつもりはねえ。最初から全力だ」
そう言うと俺は体内の魔力を全解放する。
それを見た
俺はゾクゾクとした戦意が喜びとなって体内からから
勝負はすぐに決するだろう。
周囲で決闘を見守る
それを合図に俺と
「ハアッ!」
俺が全力で突き出した拳を
それは奇妙な身のこなしだった。
足首まで
まるで海の中を泳いでいるかのように空気の中をスルスルと動くこの奇妙な動きに俺は
この動きは……使えそうだ。
これを見極めて盗んでやる。
背後に回り込んだ
俺は体を
「チッ!」
動きを見ろ。
一歩先を予測しろ。
俺は視覚、聴覚、嗅覚、そして肌の感覚すべてを
奴が繰り出す
意識するのは水の動き、いや海流の動きだ。
さっき大ダコと海の中で格闘した時に、体を包み込んだ海水の流れ。
大きな力で俺を押し流そうとするその流れに逆らえばムダに体力を消耗するが、潮の流れに身を任せれば逆に楽に移動できることもある。
あの感覚だ。
海に生きる
奴らは大いなる力を利用することに
それを
イメージしてその動きを体に連動させろ。
俺は徐々に自分のステップを変え、
すると次第に
見えたきたぞ。
動きさえ読めれば、スピードは俺に分がある。
そして奴は素早く俺の背後に回ると、両手を交差させて二本の
その瞬間。
「遅せえっ!」
俺は自分に出来得る最速の動きで体を
骨が
俺は燃え盛る拳を突き上げて
その速度と角度が最高の一撃を生み出し、
「ガアッ!」
2本の
周囲で歓声を上げていた
「オオオオオオオッ!」
俺は燃え盛る拳を振り上げて雄たけびを上げ、倒れている
ありったけの殺意とたぎる戦意を瞳にみなぎらせて。
「……おまえ、勝ち」
勝負ありだった。
ムクリと半身を起こして敗北を認める
「手加減なんぞしてねえだろうな?」
「……戦士の誇りにかけて」
まっすぐに俺の目を
これ以上は追及しても意味がない。
「ならいい。これで襲撃の件はチャラにしてやる。だが、もしまた同じように俺たちを襲ったら、その時は
「覚えておく。恩人の言葉。忘れない」
ケッ。
何が恩人だ気色悪い。
俺は魔力のスロットルを引き下げて、戦闘態勢を解いた。
体中から心地良い蒸気が放出されていく。
戦いを上空から見下ろしていたティナは、勝負が終わったのを見て俺の
「はぁ。ヒヤヒヤしましたよ。バレットさん。正直言って……あなたのそういうところは理解できません。拳を交わさないと決着できないなんて」
「別におまえの理解なんざ求めてねえさ。無理に分かろうとしなくていい。俺はこれが一番しっくりくるんだ」
「……もう。自分が
「あ~もう。うるっせえなぁ。天使の小言ほどウゼーもんはねえな」
そう言い合う俺とティナを前にして
「おまえ。俺の動き、見て、間合い、覚えた」
「
「すぐ
「フンッ。余計なお世話だ」
そう言うと俺は
「待て。我が一族。決闘負けたら、相手に宝具、渡す。決まり」
「ああ? 宝具だと? 別にいらねえよ」
余計な物をもらって、万が一それがとんでもねえ
だが、そう言う俺に
「おまえ。強い。だが、色々足りない」
「何だと?」
俺はそれを受け取り、
「箱を開けたら
「それはない。中身、
「おまえが開けろ」
そう言って
確かに中からは黒と赤のまだら色をした鉱物で作られた足輪が出てきた。
足輪とは言っても
「おまえ。炎の悪魔。これ。火山の属性。合う」
「チッ。俺は首輪だの足輪だのは大嫌いなんだ。どこかの誰かのせいでな」
そう言って
「一応もらってはおくが必要なければ捨てる」
「構わない。任せる」
「あらかじめ聞いておくが、この足輪、はめたら外れなくなるなんてことはねえよな」
「ない。取り外し自由」
俺と
「はぁ。バレットさん。
「うるせえ。一度
そう言って首輪を指差して見せると、ティナは嫌そうな顔で俺を見る。
それからティナは受け取った小箱を開けてみた。
中からは『海竜の
俺たちはそれぞれのアイテムの使い方を
フーシェ島はもう目の前まで近づいていた。
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