隠れ家
(やれやれ、まさか本当に組織を抜ける為のプランを実行する日がくるとはな....。
もし、お前が生きていたら今の俺達の状況を見てどう思っただろうな?)
キュアレスはミレナの手を握り締めながら、思わず苦笑する。
「キュアレスさん、何処に向かっているんですか?」
「地下だよ、ミレナ。
地下は監視体制が地上より厳重じゃない。
特に地下街より下は如何にインジブルといえど、流石に監視は行き届いていないからね?」
「そうなんですか?」
「ああ、そもそも地下街は市民権の無い人々の巣窟....所謂、貧民街ってヤツだからね。
だが、それ故に治安は最悪なんだけどね?」
キュアレスはやや緊張感を含む表情で、ミレナへと告げた。
そして、横壁を能力で通路へと作り直している最中、突如、異変が起こる。
地下街で、堂々とツキハギだらけの車同士がクラッシュし炎上。
それを開始の合図とばかりに、周辺にいた薄汚い身なりの者達が鈍器等の武器を片手に、乱戦を始めたのである。
「なっ、キュアレスさん、これは一体....!?」
「断定は出来ないが、恐らく縄張り争いか何かだろうな?
幸いな事に、地下街で銃などのまともな武器を手に入れるのは困難だろうから、何かあっても俺達に被害が及ぶ事はない。」
突然発生した状況に驚愕の表情を浮かべるミレナに、キュアレスは当然の事とばかりに淡々と告げた。
「そ、そうなんですか。
所であの人達、殺し合いしてるんですよね?
なら止めないとーー?」
「いや、気持ちは分からなくもないが、それは駄目だ。
彼らのイザコザに巻き込まれてしまっては、俺達が逃げ切れなくなるからな?
何より、リュナレスを抜ける前に場所を探知されたら、逃げ切る事は不可能になるぞ?」
「そうですか、でも....。」
ミレナは納得しかねる様子で、言葉を詰まらせる。
だが、その直後、ミレナの身に異変が生じた。
「ミレナ....?」
突然、意識を失い倒れたミレナを驚愕の表情で見下ろしつつ、キュアレスはミレナを抱き起こす。
(やはりか....無理もない。
何の訓練も積んでいない一般人がウィル・スキルを使用すれば、尋常ならざる負荷が体にかかり下手すれば命すら落としかねないのだからな?)
キュアレスは周囲の部品をウィル・スキルで加工し、ミレナを背負う為のバンドを作り出すと、バンドを使いミレナを背負った状態のまま動かないように固定した。
(しかし、妙な話だ。
ウィル・スキルはイレイザーズにのみ与えられた特殊な能力の筈だ。
だがしかし、だとしたら何故、一般人の彼女がウィル・スキルを使えるんだ?)
キュアレスの脳裏にそんな素朴な疑問が過る。
だが、今はそんな事をゆっくりと考えている暇はなかった。
こうしている間にもインビジブルの追手は迫ってきている。
ダークネス・ブライト キャラ&シイ @kyaragon
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