第12話 話が違うだけで問題ない

リンシャンテンが案内してきたのは、街の郊外にある大きな古い屋敷であった──


「ここが盗賊団のアジトです」

「らしい場所だな」

盗賊団のアジトはここの地下だそうだ、隠し階段の場所をリンシャンテンに聞いて、本来なら屋敷を調べまくってやっといける地下へと簡単に降りていく。


「なんだ、お前たち……ここがどこだがわかってんのか……」

地下に降りるとすぐに、いかにも三下そうな雑魚がお出迎えする。

「お前たちを倒しに来たぞ」

それを聞いたそのチンピラ風の雑魚は、口を大きく開けて大笑いした。

「ガハハハッ── 俺たちを倒しにだと、お前が? それは面白い話だな、傑作だ」

雑魚と会話しているのも時間の無駄なので、俺は短剣を抜いて、サクッと倒そうとした。

カキーン!

俺の短剣は簡単に弾き返される。


「どうした、俺たちを倒すんじゃねえのか」

うむ……おかしいぞ、簡単に倒せるんじゃないのか……

ちょっと狙いが悪かったと思い、もう一度思いっきり短剣で斬りつけた。


カキーン!


これまた簡単に弾き返される。

「ガハハハッ── なんだその攻撃は、そんなんじゃ兎も殺せないぞ」

三下の雑魚にさんざん馬鹿にされ……

「ちょっと待て、タイムだ」

俺はチンピラにそう言ってリンシャンテンの下へと歩いていき、アホ女神の頭を叩いた。


「どこが簡単に倒せるんだよ! 強いじゃねえか!」

「うっ……痛いです……おかしいですね……見張りの下っ端はレベル1のはずなのですけど……」

そう言うと、女神はデジタルパネルを表示させて、なにやら確認する。

「えー! あれ! ちょっと待って……どうしてでしょうか……そこのお方……レベル89って信じられない高レベルなんですけど……」

「89だと! 全然雑魚じゃねえじゃねえか! アホ女神! どういうことか説明しろ!」

「私にも何が何だか……」

俺たちのそんなやり取りを見ていた見張りの盗賊が声をかけてくる。

「おい……何揉めてるか知らねえけど、俺たちに用があるんだろ、頭に会わせてやるからとにかく入れよ」

「な……俺たちはお前らを倒しに来た敵だぞ、どうしてそんなに簡単に迎え入れるのだ」

「てめえらが笑えるくらい弱いからだよ、ほら、ここに客人がくるなんて久しぶりだから、頭も喜ぶだろうよ」

まあ、状況はわからないがこのまま帰るのも馬鹿らしいので、ここは言うとり中に入ることにした。


盗賊団のアジト内では、五十人くらいの盗賊がダンベルを持ち上げたり、スクワットしたりと各々鍛錬に勤しんでいる。

「体鍛えまくってるぞ……」

横にいるリンシャンテンに小さな声でそう話しかける。

「そうですね……どうしてこんなことしてるんでしょうか……私の記憶では、この盗賊団はいつも飲んだくれているだけのぼんくら集団のはずなのですが……」


「ぼんくらとは言ってくれるね」

リンシャンテンの大きな声の内緒話に対して、アジトの奥から声がかかる。そこにいたのはかなりセクシーな格好の赤い長い髪の女であった。

この女が何者なのかはどうでもいいのだが、その恰好は無視できないものだった、かなり露出度が高い……胸なんか下半分が見えていた。

「おい、アホ女神……エロいのがいるじゃねえかよ」

「あっ、本当ですね……でも、おかしいな……あれはデフォルトの衣装じゃないですよ、どうしてあんな恰好してるんでしょうか……」

「ちょっと待て! 普通はあの恰好じゃないのか?」

「はい、通常の衣装はもう少し露出が控えめですよ、あれは確か一周年記念のイベントで実装されたレアアバターだった気がします」

「レアとかそんなことはどうでもいい! 要はアイツは着替えができるってことだよな!」

「え! あっ……できますけど、たぶん私と一緒で、服は脱げませんよ……」

「ふっ……そんなことわからんではないか」

そんな会話していると、赤い髪の女が声をかけてきた。

「そんなところでコソコソ喋ってないで、こっちきなよ、ここにお客なんて五千年ぶりくらいなんだから歓迎するよ」

五千年というフレーズに、ちょっと違和感を感じる……全てのNPCって自分が五千年の月日を過ごしたって認識があるんだ、リンシャンテンは最高レベルのAIなので特別だと思ってたけど……


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