第10話 パンチラが限界です
エロを探す俺たちが、まず向かったのは美女NPCが集まると言われていカフェであった──ゲームの世界だからなんでもありなのか、オープンテラスのある現代風の洒落た感じのお店だった。
「健作さん、いいですか、私がこの荷物をあの子たちの前でわざと落とします、それを拾おう女の子がしゃがんだ時に、なるべく低い姿勢でスカートの中を覗いてください──いいですか、不自然にしゃがんで不審に思われないでくださいね」
こいつ、女神のくせになんと不謹慎なことを真面目に考えれるのかと感心しながら、俺は頷いた。
リンシャンテンは、打ち合わせ通りに二人組の可愛い女の子たちの歩く前で荷物を落とした……女の子たちはそれをチラッと見ると、完全に無視して歩き去る。
「拾わんではないか!」
「おかしいですね……まあ、そんな事もありますよ、もう一度やりましょう!」
もう一度、今度は素直で優しそうなプリースト風の女の子に狙いを定め、リンシャンテンはさっきと同じように荷物を落とした──女の子は落ちた荷物を見もしないで、そのまま歩き去る……
「素直で優しそうな子なのに拾わんではないか!」
「おかしいですね……まあ、ちょっとタイミングが悪かったのかもしれません、もう一度やりましょう!」
今度の狙いは人生経験豊富そうなキャリアウーマン風の美女であった、同じようにリンシャンテンは荷物をその女性の前で落とす……すると、女性はしゃがんでそれを拾ってくれた……
「てっ、しゃがんで拾ってくれたのはいいが、ズボンではないか!」
思わずリンシャンテンの頭をパチンと叩く。
「う……そうでした、スカートじゃないとダメでしたよね」
「もういい! 違う方法を考えるぞ!」
俺たちが次に向かったのはとある建物であった──
「なるほど、ここなら労せずしてパンツが拝めるということだな」
そこの建物には、非常用なのか木製の階段が建物の外側に設置されている、ここを上り下りする女の子がスカートなら、下からばっちりパンツが堪能できるという算段であった。
「そこの物陰に隠れて、女の子が来るのを待ちましょう!」
ということで待ち始めたのだが……来るのはおっさんばかりで、若い女の子どころかおばちゃんすらやってこなかった。
「女の子なんてこないではないか!」
「ですね……さすがにこんな路地裏には来ませんかね」
「たく……移動するぞ!」
ということで、次にやってきたのは町の大通りに架かる橋の下、ここなら人通りも多く、女の子も沢山通りかかるので絶好のビューポイントだと思われる。
「確かに女の子が通るが、ちょっと距離があるからよく見えないな」
俺たちのいる河川敷から橋までの距離は五十メートルくらいで、ちょっとパンツを堪能するには距離がありすぎる。
「仕方ありません、神器を出す時がきたようですね」
「なんだよ、神器って」
「これです!」
そう言ってリンシャンテンが取り出したのはごく普通の双眼鏡であった。
「なんだよ、ただの双眼鏡じゃねえか」
「ふっ……健作さん、ここがファンタジーバリバリのゲーム世界ということを忘れていますね、この双眼鏡は高性能の電子双眼鏡なんです、この世界に存在してはいけない、化学機器なのですよ、ですからまさに神器と呼ぶにふさわしい……」
「わかったから早く貸しなさい」
俺はリンシャンテンの説明を最後まで聞かずに双眼鏡を取り上げた。
さすが高性能というだけあって、なかなか鮮明に拡大表示されている、これならパンツもバッチリ見えそうだ。
「健作さん、ちょっと私にも見せて下さいよ」
おっおっと楽しそうに覗いているのが気になったのか、リンシャンテンがわけのわからないことを言い出した。
「お前が見てどうすんだよ」
「ちょっとだけでいいですから~」
そう言いながらリンシャンテンは強引に俺から双眼鏡を取り上げようとした。
「やめろって、うわっ、こら……あっ……」
パリン……岩の上に落とした双眼鏡は、乾いた音を響かせた……
「うわー! 私の神器が! 科学機器が!」
双眼鏡のレンズが完全に割れている……もう使い物にならないだろう……
「お前が無理に取り上げようとするからだろ」
「あ……女神の支給品が……もうどうしようもなくなったら売り払ってお金にしようと思ってた財産が……」
リンシャンテンは半べそをかいて双眼鏡を抱えている……絶望の表情に、この世の終わり感すら醸し出しているのを見て、少しだけ、ミリ単位で、ミクロなん感じで可哀想に思った俺はこう言ってやった。
「ちょっとゲームを進めてやるから、そんなことで泣いてんじゃねえよ」
それを聞いたリンシャンテンの表情が明るくなる。
「本当ですか! ゲーム進めてくれるんですか! あっでも……パンツまだ見てませんよね……」
「それは後で存分に堪能するに決まってるではないか、いい方法をちゃんと考えておけよ」
「あっはい!」
リンシャンテンは心底嬉しそうな笑顔で返事する。まあ、下僕にも少しは飴玉を与えておいてもいいだろう。
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