第6話 接待レベルあげ

「それでこれからどうすればいいんだ」

「話の通り、ゴブリンの巣に行って髪飾りを取り返しにいきます──あっでも、レベル1では厳しいので、少しレベルを上げないといけませんね」

「レベル上げだと……RPGで俺がもっとも嫌いな作業ではないか……」

明らかに不快なった俺の顔を見て、リンシャンテンは慌ててこう取り繕う。

「あっ、大丈夫です、本当はダメなんですけど、私もちょっと手伝いますのでパパっと上げちゃいましょう!」

「パパっとね……」

ちょっとアレな女神の言うことなど一ミリも信じてはないが、とりあえず言う通りにレベルを上げてやることにした。


「はいっ! 健作さん、どんどん斬っちゃってください!」

俺は目の前に飛び込んできたプニョプニョしたモンスターを、すごく嫌そうに短剣で斬りつける──プニョプニョは見た目通り弱いモンスターのようで、その一撃でプシュッという音とともに消滅する。


「はい、プニョのみなさん、こちらに集まってください~順番ですよ、順番、反撃しちゃダメですよ~やられに行く時は、クリティカルの出やすいように弱点をさらけ出してください~」


……手伝うというから、一緒に戦うのかと思ったがどうやらそうではないようだ、リンシャンテンは俺の前にモンスターを誘導して、狩りをサポートする……腐っても女神のようで、モンスターたちも言うことを素直に聞いている。

しかし……確かに楽ではあるのだが、これすら面倒臭くなってきた……


「おい、下僕女神、もっと楽はできないのか」

「ええ! これでも十分に楽だと思うのですが……」

「いいからいい方法を考えろ」

「これ以上に楽な方法って……」

「俺はそろそろイライラしてきている──早くしないとペナルティーが加算されるぞ」

「ええ~! わっかりました! ちょっと待ってくださいね、ええ~と……」

そしてリンシャンテンが無い知恵を絞って考え出した方法は……

「はい、健作さんはそこに座ってください、あっそうです、そして短剣をこちらの方向に突き出して……いいですね、いいですよ、じゃあ、そのまま動かないで下さいね」


リンシャンテンは俺を椅子に座らせて、短剣を前方に突き出すように持たせる──そしてプニョたちを俺の前に一列に並ばせると、こう指示を出した。


「はい、プニョさんたち、順番にあの短剣にぶつかっていってください~思いっきりいかないと一撃で死にませんよー生き残ったら列の後ろに戻ってやり直してください」

プニョはリンシャンテンの指示通り、俺の持つ短剣にどんどん体当たりして死んでいく……まあ、確かに俺は何もしなくて楽だが……人として……いや、女神としてどうかと思うぞ。

「はい! はい! はい! このリズムでどんどん行きましょう!」

プニョたちはリンシャンテンの手拍子に合わせて短剣に死の体当たりを繰り返す……冷静に見るとかなりカオスな光景に、さすがの俺もドン引きする……

しかし、こんな方法でも経験値はちゃんと入っているようで、レベルはいい感じに上がっていった。


しばらくこの方法でレベルを上げていたが、流石にこれすら飽きてきたので下僕女神に文句を言う。


「おい、駄女神、もう嫌だから帰りたい」

そう言うとリンシャンテンは慌てふためく──

「あっ、そうでうすね、レベル7ですし、もうゴブリンの巣を攻略できそうですね、それじゃ、帰る前にパパッとやっちゃいましょうか!」

「ええ〜面倒臭くなったな〜」

「そんなこと言わずにね、ねね」

「ゴブリンの巣って遠いんだろ? やだな〜帰りたいな〜」


「あっ、少し離れていますけど、それは私の瞬間移動でパパっと! あっという間ですよ! 便利ですね、瞬間移動!」

「ふむ……まあ、それなら行ってやらんこともないな」

リンシャンテンは俺のその返事に、心底安堵しているようだ。

「それではパパっと瞬間移動します!」


俺の気が変わらないうちにと、リンシャンテンは急いで瞬間移動を開始する──

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