第5話 未来

総理大臣、河流聖人の会見から一変、周りの人々の反応が大きく変化した。

種族の壁を超えて手を取り合う事を考える人が増えてきたのだ…。

今まで表に出てこなかった河童一族も聖人の会見の後に姿を見せる様になり、再びかつての様な時代を取り戻そうとしているのであった。


総理の憲法改正という発言から一週間の時が過ぎた…。



「ジュン…凄く変わったね」

「えぇ……アナタも随分頑張ったわ」

「…ボク、何もしてないよ?」

「したじゃない」

「??」

「一生懸命この時代を生き抜こうとしたでしょ?」

だって本当にそう思うもの…ウィズは凄く頑張ったと思う。

「でも、これからだぜ?」

アキラの声がする方に顔をむける二人。

「これから?」

「あぁ、これから色々な権利をもらったり、していかないといけないだろ?」

「学校に、ボクも行けるの?」

「そうね、学校に行ったり、遊園地とか映画館…行きたい所に自由に行ける様になるわよ」

「ボクも他の皆と同じに出来るの?」

「あぁ、その為に総理が、周りの皆が頑張って動いているしな…知っているか? 

総理の学生の時に生死を迷った時に支えてくれたのって、実は河童狩り一族の血を引く学校の先生だったんだってよ」

「そうなの?」

「あぁ、俺も父さんから聞いた時は驚いたけどな…そうやって考えを変えて生活しているヤツもいるって事なんだよな…」

「凄いわね…」

「ボクの側にはジュンやアキラ君がいた…」

「あぁ・・・これからもっと友達も増えて楽しい事が沢山待ってるぞ」

「うん! 楽しみ!」

ウィズは最近よく笑う様になった。

アキラが上手くもっていってくれるのもあったけど、何よりも総理大臣が今までにない働きをかけてくれたのが大きいと思う。

今まで、憲法9条の改正だとか、税金の値上げとかそんな事ばかり議論を続けて、国民が喜んだためしが無い時代だった。

今回、総理大臣の河流さんが発令したものはそれだけではなかった…。

勿論古くからあった多種族の介入を認める事。

それに伴い河童狩り一族の様な行いをしてきた一族は、狩り行動の廃止などが申し渡された。

そして、我々国民の中で驚いたのが議員の給料や年金の改正だった。

『そもそも国の為に働いているからと言ってこんなに給料や年金を貰う必要なんてないんじゃないでしょうか? 普通のサラリーマンと対して変わらないのだし、給料を下げ、その下げて出てきた金額を今も増え続ける国の赤字を減らしたり、国民の方の望んでいる施設運営費、各種手当てに当てていきたいと思います』

こんな国民の事を考えたヒトは今までいただろうか?

今までそれに満足してきた議員達は納得がいかない様だが、その我々の払っている税金が、今まで苦しい思いを虐げられてきた多種族のヒト達に少しでも助けられるモノとなるのならこんなに良い事はないと思った。

「かなり敵を作るよな…総理は」

「そうね、国民の賛成意見は多いと思うけど議員の中では浮いてしまうかもしれないわね」

「父さんは賛成してたけどな」

「流石、アキラのお父様ね」

「まぁな」

「そーりだいじんのヒトの言っている事、難しい…」

首をかしげながらニュースを見るウィズ

「まぁ、簡単に言っちまうとムダ遣いをなくして、国の為にそのお金を使いましょうって事だ」

「そっかぁ」

フムフムと納得してテレビに視線を移す。

「簡単すぎるんじゃないの?」

「子供にクドクド言ってもしょうがないだろ? それに、関心を持つのは良い事だぞ?」

「それもそうね」

子供の自主性を重んじてあえて全ては語らない。

良い教育方針かもしれない。


現在に続いてこれから来る時、未来。

窓の外に延々と続く青い空…雲一つない空を見て私は目を閉じる。

変わっていける、いや、もう変わったのだと…。


「さ、ウィズ買い物にいきましょうか」

「うん!」


今はまだ混乱の最中だが、数年の後に元気にランドセルを背負って街中を走り回るウィズを見るのは、もう少し先の話……。

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