第3話 変化

『ここに法の改正を求める!』

一つの審議の中で誰かが言った。

賛成と反対の声が国会で響く…。

テレビを通して見ていた私とウィズは、固唾をのんで見守った。


「あ、アキラ君のお父さん」

「本当だ…お父様も大変ね…」

言い争いをしている議員の中にアキラの父も参戦している。

今の総理大臣には何も期待していないので近々選挙も行われるだろう…。

ならば、この波が良い方へ向かえばウィズの過ごしやすい世界が生み出せるかもしれない…。


「アキラ君のお父さん、次のそーりこーほって言ってた」

「総理大臣…日本で一番の権力者ね…でもアキラが言うには自分はサポートする側であって人の上に立つ人間じゃないって言っていたみたいよ?」

「一番じゃないの?」

「一番じゃなくても出来る事は沢山あるもの」

「そっかぁ…アキラ君のお父さんは凄いね!」

「そうね…なかなか言える事ではないものね」


ウィズが戦う決心をしてから一ヶ月、周囲の変化は激しかった…最初は恐れられ、冷たい視線を浴びたものだが、今ではすっかり町内の有名人にまでなっている。


理由はただ一つ、ウィズの素直さ。


ウィズは人の言葉を素直に受けとる、出会った頃とは違う部分…。

アキラと出会って変わったところ…そこが町内の人気者になる秘訣なのかもしれないが…。

隠す事をやめて、受け入れてもらいたいという気持ちが皆に伝わったのかもしれない…。


「ニュース見た? ウィズ君も、もう少ししたら自由に外を歩けるかもしれないわよ」

「うん! ありがとう」

近所のおばさんとの会話、ウィズは凄く喜んでいる…ニュースで議員が言っていた事への期待と近所の人達から自然に声をかけてもらっている事に…。

ウィズと同じ河童一族なんてほとんど存在しないため、今回のニュースはかなり注目を集めている。


「もしかしたら他の仲間も見つかるかもしれないね」

「うん!」

周囲の人々に元気付けられてウィズはかなり上機嫌だ…。


「ねぇ八百屋のおばさん、テレビで言ってた、ぎいんさんって誰?」

「あぁ…あの最近議員になった若いお兄さんだろう? 確か河流 聖人さんって言ったかね」

「かわながれさん?」

「そう、何でもあの人自身にも何かあるって話だからねぇ…どうかしたのかい?」

「ううん、ありがとう」


八百屋のおばさんから情報を貰ったウィズは一目散にジュンの元へ急いだ。


「ジュン! 聞いて欲しいの」

「どうしたの? ウィズ」

「あのぎいんさん、何かボクと近い気がするの…」

近い? 彼は普通の人間だから河童ではないと思うのだけれど…。

「何が近いの?」

「ちょっと河童っぽい…」

難しい…ちょっとって何だろう?

「どうしてそう思うの?」

少しでもウィズの言っている事を理解したくて話を進める。

「小さい頃にお母さんが言ってたの…結ばれない恋があるって…」

「結ばれない恋?」

確かに遥か昔、河童と人間が共存していた時代にその様な事があったとされると書物に記されているものもあったが、本当の所は解らなかった。

今の時代にそんな危険を犯した禁断の恋なんて存在しているとも思わなかったからだ。

「人間と河童の子供には種類があるの」

「…種類?」

「うん…人間の血が濃くて河童の能力を何一つ持たない人、河童の血が濃くて頭に皿があったり、鱗があったり河童と変わらない人、両方の血が濃くて人間の姿をしているけど河童の能力が濃くてどっちにも属さないヒト」

確かに人間の血が濃かったら人間として生きるだろう…そうしたら解らない、ウィズみたいに河童の血が濃かったら頭に皿があったり、鱗があったりしたら河童として生きる…どちらにも属さない? それじゃ解らないわ…。

「それで、河流さんってどっちなの?」

「あのヒトは珍しい…人間と河童の禁忌の子…大人になれる確率が少ないからかなり貴重だよ…ホラ、目の色が片方違うでしょ?」

テレビの青年を指差して説明をするウィズ。こんな所にウィズの仲間がいた…。

「じゃあ、自分達もそれで苦しんだから戦っているんだ…」

「うん…嬉しい…」

「頑張ろうね、ウィズ」

「うん!」

一人の青年の発言によって多大な変化が起きた。

ウィズにとっては仲間が見つかった、ジュンにとっては希望が用意された。

ここからが本当の戦い…今、そう感じさせた。


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