第十九章 ―救いの手・・・―

「聖人……。」


大樹の中心で身体を丸め、まるで胎児のような姿の聖人を遠くから見つめる神


「聖人………。」


少しづつ、少しづつ聖人へ近づいていく神…。

だが、大樹は湖の中心にあり、渡ろうにもかなりの深さで辿り着く事が難しい……。


「…どうすればいいんだ?」


時間がない…だが、聖人へ辿り着く術がない…思い出せ…聖人はあの時何を言っていた?


神の中の記憶…それは、前に聖人が見たという夢の話……。


『ねぇ神……神は夢の中の世界って信じる?』


聖人との会話を思い出せ……何処かにヒントがあるはずなんだ…


『最近見る夢って何か違うんだよね…暖かいっていうか…懐かしいっていうか…上手く言えないんだけど…オレが行かないといけない場所なのかなぁって感じさせるんだ……。』

『ほぉ、是非見てみたいものだな…。』

『あぁ…すっげぇ綺麗な所だからさ、見せられるなら見せてやりてぇよ。』

『なら、今度お前と寝た時に一緒の夢を体験させてもらうかな。』

『ははっ…そんなん出来たら苦労しねぇっての…じゃあさ、オレは夢の入口で待ってるから神はオレを見つけてよ。』

『あぁ構わないぜ。』

『そしたら言ってよ…オレの事必要だって、オレは神のモノなんだって。』

『あぁ? そんな事…いつも言ってるだろ?』

『だからいいんだ…だって、そしたら神だって分かるし…それにオレはやっぱり神の隣にいていいんだって安心するから……。』

『あぁ…分かったいくらでも言ってやるよ…なんならプロポーズでもしてやろうか?』

『ははっ神って…ロマンチストだな』


昔のたわいもない冗談のはずが本当は聖人からのSOSだったとはな……。

聖人との会話を思い出す神…。


「そう、聖人は『オレは夢の入口で待ってるから神はオレを見つけてよ』って言っていた…ここに聖人が見えるって事はここが入口なんだ…。


入口の聖人を神は見つけた…。

次に神がしなければならない事を思い出す神・・・


「俺は聖人と約束した…『そしたら言ってよ…オレの事必要だって、オレは神のモノなんだって』…つまり聖人に解らせないといけない…。」


聖人の存在が必要だと伝えなければいけない…。

そう、聖人を起こさないといけないことになる…。


「聖人っ!! 俺は来たっ!! お前のところに…前に言ったよなお前が俺に見せたい世界があるって…俺はお前がいないとこの世界をちゃんと見る事も出来ない…それに、お前のいる場所は俺の隣だろ?」



神の叫びが湖畔に響き渡った……――。



「し…ん……。」


微かに聖人の声が聞こえた気がした……。


「聖人っ!! お前は俺の隣にいればいいんだ…ここに来て俺を感じろ!!」


「し…ん……神………っ神ぃ―――――――っ!!」



聖人の叫び声と共に聖人へと繋がる光の橋が現れた………――。



ゆっくりと足元を確認しながら聖人の元へと向かう神。



大樹の下で動けずにいるのか、聖人が小さく蹲っている……。

まるで迷子の子供が心細くなって小さくなって泣いている姿を想像させた……。



『そしたら言ってよ…オレの事必要だって、オレは神のモノなんだって。』



やっと聖人に直接言える…神は逸る気持ちを抑えて聖人の元へ向かう…。



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