第十七章 ―救える者―

小助……? 割と古風な名前だな…って違うな彼が禁忌の子…確かに禁忌の子特徴であるオッドアイや素人目でも分かる人間とは違うオーラをまとっている…。


「貴方が…高祖母様を愛して下さった方なんですね…初めまして如月 神です」

           

「初めまして…ボクがさざなみ 小助です…如月…と言いましたが君達の時代では河童狩りはもうされてないのですか?」


初対面の俺に対して物怖じしない…それどころか逆に興味を持たれている……凄いヒトだな…。


「いえ、表向きは…実際は今も河童一族の方達は迫害を受けています。希少価値だと国は保護していますがそれは表向きな言い方で実際は監視が目的なんですよ…。俺が如月と名乗っているのは政府に高祖母様と同じ様に実験サンプルとして扱われるのを防ぐ為です……。」


事実を伝えなければ意味がないだろう…下手な気休めもバレるだろうし…。

特に俺は、一番高祖母様に似ていると言われていたしな……。


「そう…いつの時代も悲しいね……。」


そう言った彼の横顔はとても悲しそうだった……。


「だから…救いたいんです…大事なヤツを……教えて下さい。漣さん、アイツは…聖人は何処にいるんですか?」

「感じるよ…とても弱った気だけど…彼は何度もこの世界に足を踏み込んで来ていた…この世界に生きたヒトが入るには両者の同意と相手を思いやる強い心が必要だ…神君…君は以前、聖人君にこの世界の話を聞いて、見てみたい、若しくは行ってみたいと口にしたね? そして聖人君と君はお互いを信頼しあっている……。」

「……はい…だから来れたんですね…それで、どうすればアイツを救えますか?」

「その時で条件が違うかもしれないけど、ボクは灯さんから人の愛の心を貰ったよ。」


人の愛の心…聖人が求めるモノ……俺の聖人への気持ちの示し方…聖人の一番…?


「俺は……。」


聖人が一番欲しかったモノは親からの愛情…――。

でも、それが本当に一番か…・・?


聖人の事を理解しきれてなかったのではと自己嫌悪に陥る神……。

そんな神に小助は一言付け加える……。


「一番の方法はね、今かくれんぼしている彼自身を、君の力で見つけてあげて眠っている彼を起こしてあげることかな…ボクはこの臨界点を迎えた時に、灯さんが種族に差なんてあってはならないって助けてくれたから偶然にも生き長らえたけどね。」


起こして連れて帰ってやる事……確かにそうかもな。


「ありがとうございます…漣さん…漣さんは河流一族ではないんですか?」

「一族の人間ではあるよ…本家と分家では本家の部類かもしれないけど、昔は河が小さな波をたてて流れているって意味でさざなみと名乗ったけど、いつからか河が流れる所に住むモノとして河流と主張する者もいた…だから二種類の名乗り名がある…。」


……成る程な……。


「ありがとうございました……俺、行きますね。」

「気をつけなさい…生きる者は長い時間ここにはいられないからね。」


いつまでも優しいままの神の高祖母、灯。


「はい……霊魂でも何でもいいから、再び貴女に会えた事を嬉しく思います。」


灯を心から尊敬し、喜びと感謝の気持ちを表す神……。


「私も、こんなに成長した神を見れてよかったわ。」


目にうっすらと涙を浮かべて彼らの…神の安否を気遣う灯。


「小助さん……ありがとうございました。」


灯と同じ位に神や聖人を思う小助。


「君達が幸せに生きてくれる事を願うよ。」


彼らの今後を想い神が行くべき道を示す――。


「はい…必ず聖人を連れて帰ります。」


二人に別れを告げてその場を後にする神…小助が示してくれた道を真っ直ぐ突き進み聖人の気配を探る………。


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