第六章 ―信じたい気持ち・・・―

全てが信じられなくなった…。

神が…両親が…春流子が…海里が…。


「……ぃ……と………さと……おい、聖人!!」

「わぁっ!! …って何だ翔かよ…。」

「何だってお前なぁ……。」

翔と優には心配かけたくない…。

でも、今のオレには余裕がない…。

「どうかしたの? 聖人。」

「いや…何でもない…悪いな。」

いくらなんでも、『オレ、そのうち処分されるんだ…』なんて言えない……。

「ならいいけどよ。」

あーあ、また翔の機嫌損ねちまった…。

まぁ優に任せよう…言ったら、翔と優はきっとオレを助けてくれる…。

いや、助けようとしてくれる…だからこそ言えないんだ…二人が…二人が大事な親友だから……。

神……オレは…オレは信じていいのか………?


!?


「うっ、ゲホゲホ……ハァハァっ…ゲホゲホっ!!」


「「聖人!!」」


あぁ…なんかヤバイ……神………。


「!?聖人………?」



―そして…聖人は意識を失った―



「おいっ如月っ!! 聖人が…。」

「先生、早く聖人を見て!!」


―倒れた聖人を抱えて翔と優が保健室にいる俺の所へ走りこんできた…―


「聖人!? 一体何があった!?」

「…何か…何か考え事してて……そしたら急に咳込んで倒れたんです…。」

「なぁ、病院か? 救急車呼ぶのかよ!!」


―咳込んで苦しむ聖人を、ただただ見つめる事しか出来ないのか?―


「………いや……聖人はこのまま様子を見る…。」

「!? だって…聖人は苦しんでいるんですよ!!」

「テメーっ!! 聖人を見捨てるつもりかよ!!」


―俺だってどうにかしたいさ・・・でも・・・聖人は他のヒトとは違うんだ・・・―


「普通の医者じゃ…聖人は救えないんだっ!!」


―あぁ………俺はなんて無力なんだろう………―


「「え!?」」


初めて聖人の事を語りだす神に、驚きを隠せない翔と優……。


「今まで…聖人は何も言ってなかった……。」

「普通に…風邪引いたら近くの病院に行って薬貰って・・・そんな生活をずっと送ってきました……。」

「あぁ……その程度ならな……元から母親の……人間の血が濃いからその位なら問題ない…だけど…アイツは…聖人は禁忌の子だから…。」

「このまま…助からねぇのかよっ!! 何か…何か方法があるんだろ?」

「僕等は…聖人に何がしてあげられますか?」


―普通なら取り乱して狂いだすかもしれないのにコイツ等はしっかりしていた…―


「お前等…なんで聖人にそこまでしようとする? 聖人は禁忌の子で…お前等にとっては足かせにしかならないかもしれないんだぜ?」


「「そんなコトないっ!!」」


「聖人は…一番オレが荒れてて手がつけられない時に…見捨てずに手を差し伸べて考えてくれた…ガキの頃もババアに虐待受けてた時も必死になって助けようとしてくれた…。」

「聖人は…僕がうまく人付き合いが出来なくて苦しかった時、一緒に悩んでくれた…。翔が一人で苦しんでいるのを助けられなくてどうにも出来ない時…一緒に戦ってくれた……。」

「「オレは(僕は)聖人に救われた……。」」


―聖人…お前は一人じゃない…独りじゃないんだ……―

「お前等なら……聖人を救えるのかもしれないな……。」

「「え!?」」


――なら……語るしかないだろう…………それで……

……それで…聖人が救えるなら…………――

「今から話してやる……逃げるなら今のうちだ……。」

「誰が逃げるかよ!!」

「僕等は…聖人を救いたいんです。」


―聖人……お前はいい友人に巡り会えた……―


「分かった……話してやる………。」

そして………今まで表へ出ることのなかった河童狩りの姿が明らかになった………。

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