第二章 ―欲しいもの―

ヒトはぬくもりを感じられないと生きられない生き物だと思う…。

でも、それがなくても生きなければならないのもまた、ヒトだと思う…。


オレは、どっちだろう…?


「どうかしたのか? 聖人…。」

「え!? いや…何でもない…ごめん先生…。」

今、このぬくもりの中で安心して良いのだろうか?

「ならいいんだけどな…(聖人のヤツ、また悩んでるな…)」

父さんは、一族の恥であったオレを多少は気にかけてくれるが余所余所しい。

母さんは、基本的に子供には優しいから問題ないってカンジだけど、オレより後を継ぐ弟の方を大切にしているように見える…。


テストで100点をとっても、部活で賞を貰っても、学年でトップになっても…オレが一番であることはなかった…家の中では特に…。


……でも、今は違う…オレには先生がいるから……。


「あっ、ん…あぁ……せんっせぇ…。」


先生とこんな関係になるとは思わなかった…。


「ムリ? まだこんなに濡れてるのに? …ウソはいけねぇな、聖人。」

「あっ…あぁ――――――――」


だって、オレは普通に彼女つくって、楽しい高校生活とかを送ると思ったから…。


「今日は心ここにあらずってカンジだな。」

「はぁ…はぁ…せん…せ、ごめん……。」


でも、何か苦しくなったんだ…今まで貰えなかったモノを一気に貰ったから…。


「…聖人…我侭言っても良いんだよ。」

「え!?」

「欲しいって言っても、怒っても、泣いても良いんだ…毎日言われるとうぜぇけど、今まで言ってこなかったんだ…誰も怒らねぇよ。」

「…せん、せ……。」


言って欲しかったコトバを先生はすぐにくれる…。

いつもオレの世界を変えてくれる。


「…お前は素直すぎたんだなぁ…俺は少なくとも聞いてやる…。」

「せんせぇ…。」

「俺は、お前だけの『神』だからな…。」

「…ありがとう…。」

「ま、それに夜にお前が言うこと聞けばいいわけだしな♪」

「なっ!? 先生の都合じゃねぇかっ!!」

「あぁ? 若いんだから付き合えよ」

「もう、24なんだから控えときゃいーのに…。」

「…(怒)聖人…今日は寝かさねぇ。」

「えっ!? ちょっ、せんせ…あぁっ…。」

与えてくれるモノの大きい先生に、オレは一生頭が上がらない気がする…。

オレが先生に返せるモノはあるんだろうか…?

「聖人…。」

「ん、っ…し……ん…。」


月夜がオレたちの情事を照らし出す…。

先生の部屋のベッドでする音は、変声期を迎えたのに高く響くオレの声と、低くてハスキーな先生の息遣い…。

そしてきしんでいるベッドのスプリングの音…。


淫らな水音が室内に響き渡る…。


「あぁ、せん…せっ…あっ―――――」


次々と襲い掛かる快楽の波に耐え切れず声をあげてしまう…。


「だいぶ慣れてきたよなぁ~聖人のココも。」

「んっ、そんなコト言わなっ…あぁ…。」


あえて触れて欲しいトコは触れてもらえず、イきたくてもイけない状態が続く…。


「聖人…どうしてほしいんだ?言えるだろ?」

「わかっ…てる、クセ…にぃ」

「俺はお願いの出来ないようなヤツに躾けた覚えはねぇぜ?」

「し、ん…。」

「ん?」

「…イかせて…。」

「ったく、しょうがねぇな。」

「あっ、ん……あぁ――――――っ!!」


激しい動きに身体がついていかない…。

先生のなされるがままにただ啼かされる…。

身体中が震え、精を放つ。

真っ白な世界が見えても、オレは目を閉じるコトは許されない…。


「お前だけ満足してんじゃねぇよ。」

「あっ、しん…し、ん…。」


先生の名前を呼ぶことしか今のオレにはできない…。


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