第三章 ―与えられたモノの大きさ-

与えられたものの大きさは、ヒトによってそれぞれ異なるだろう…。

そのせいで悩む奴もいるのだろう、アイツもその一人だと思う…。


「ん……。」

暑いのだろうか、しきりに寝返りをうつ聖人を見て俺は微笑ましく感じる…。

「聖人……。」

聖人を初めて見たとき、俺は何かを感じ取った…。

『コイツは俺のモノになる』…そう思った。

何故そう思ったのかは知らないが、俺の一族の直感なのか、俺と聖人を結ぶ何かがあったのか…。

どちらにしろ俺と聖人は同じ運命を辿ることになったのだろう…。


「し……ん……。」

「可愛い寝顔見せやがって…。」

聖人は愛を知らずに育ってきた…。

いや、知ってはいるのかもしれないが、自分がもらえる立場には立てない子供だった…。

それが普通に感じる前に出会えて良かったと心底思った…。

「お前は一人じゃない…。」

何度言ってやっただろう? 何度抱いてやっただろう?

聖人は大事にされることに慣れていない…。

「お前の親友だって、お前を大事に思ってるんだぞ。」

聞こえているわけではないが聖人の髪をなでて語りかける。


『言ってる意味が解らねぇな。』

『だからっ、聖人を遊びでからかってるんだったら手を引けって言ってんだよっ!!』

『しょ、翔、イキナリ先生に失礼だよ。』

『いいんだよ、優。』

『遊び……ねぇ……。』

『聖人はそういうの知らねぇんだ、もしアンタが遊んでるだけだったら一番傷つくのは聖人なんだっ!!』

『僕たちは…もう聖人に傷ついて欲しくないだけなんです…。』

真正面に立ち向かってきた、大事な親友を守るために…。

『遊びじゃなかったら良いのか?』

『…っそれは…聖人次第だ……。』

『聖人が悩んで決めたことなら、僕らには反対する意味はありません。』

『なるほどな…。』


聖人は本当に良い友達に出会えたと思った…。


『…で、どうなんだよっ!!』

喧嘩腰の浅木 翔、学園の問題児で学年のNO.3。


『翔っ!!落ち着いてってばっ!!』

仲裁役の斉木 優、学園のマスコット的存在で学年のNO.2。

この二人は二人でデキてるわけだが聖人の大事な親友でもある…。

『…遊びじゃねぇよ…俺はな…。』


聖人もきっとそうだと思うけど…。


『もし、アンタの事で聖人が苦しむ事になったら…オレがアンタを殺してやる。』

『…翔の言っている事は少し大げさですけど、聖人が傷つく事になったら…僕等は全力で聖人を守りますから…。』

『あぁ…。』


「聖人…お前は愛されているんだ…ちゃんと…だから…最後まで生きてくれ…俺よりも永く……。」



聖人の髪をなでながら、俺はそれしか言えなかった…。



本当は、聖人の『神』だなんて名乗れない…いや、名乗る資格なんてない…。



俺は聖人も知らない聖人の秘密を知っている…。

聖人には言えない…いや、言えるわけがない…。



―ベッドから立ち上がり本棚の奥に隠してある書籍を一冊取り出す…―



【禁忌婚で生まれた子供の生態について】


―パラパラとページをめくる音だけが静かに室内に響き渡る…―



―パタンと静かに閉じられた書物には一体何が書かれているのか…?―



「聖人…。」

俺は、聖人を守ることが出来るのだろうか…。

何も知らずに眠る聖人の隣に身を寄せて、まだ何も気づいて欲しくないと心に思いを抱きながら…静かに瞳を閉じる…。

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