第一章 ――出会い――

情事の後はいつもタバコを一本吸ってしまう…。

この癖だけはどうにも治らないものだ…。

「タバコ、止めたんじゃなかったのか?」

「うん…でもオレ…中毒だから…。」

タバコだけじゃないけど…なんてことは言えない…。

「あまり吸ってると早死にするぞ。」

「はは、先生が言っても説得力ないよ、オレよりヘビースモーカーなんだからさ。」

なんだかんだ言ってオレから一本もらって火をつける…。

「俺より先は許さないってコト。」

「えぇ~、難しいなぁ~。」


3年前…オレが15の時、オレと先生は出会った。

タバコ吸って、意味もなく誰かと喧嘩して深夜の街をウロついてた…。


『じゃあ、おれ帰って寝るわ、じゃ~な、聖人』

『あぁ、またな(はぁー…この時間じゃ母さんは起きてるだろうなぁ…)』

家に帰るのはいつも明け方で、学校にさえ間に合えば良かったという感じだ…。

『最悪…他の連中どっかにいねぇかなぁ…。』

暇をもてあましたオレはタバコに火をつけあてもなく歩き出した…。

『なぁ、そこのチビ』

『!?(チビってオレのことじゃないよな・・・これでも160cmはあるわけだし…多分人違いだよな)』

『聞こえてねぇの? 八重歯でチビな河童くん。』

ブチッ

『チビと八重歯は認めても、オレは河童じゃねぇーーっ!!』

『ククっ…聞こえてんじゃん、連れに振られたから付き合えよ。』

『……はぁ?……。』


「あの時の出会いでここまで来たオレって凄いなぁ…。」

「ん?」

「先生の誘い方、最悪だったじゃん。」

「あぁ…アレか、だってお前寂しそうにしてたからよ。」

「……っ寂しそうになんかしてねぇよ!」

「はいはい…ったく素直じゃねぇなぁ~、さっきまであんなに素直だったのによ。」

「変なコト言うんじゃねぇよっ!!」


『お前中坊だろ? こんな時間にフラついてると襲われるぜ?』

『…別に平気だし…誰も心配してねぇから…ってか男襲うヤツがいるかよ。』

『いるかもしれないぜ? …例えばここに(ニヤリ)』

『えっ!?』

『ククっなんてな、ホイホイ他人の車なんか乗ってるとヤられちまうぜ、親に習ったろ?』

『っアンタなぁーーっ!!』

初めて会ったあの日は、憎まれ口をたたきながらも先生は車で送ってくれた…。

『へぇ~イイ家に住んでんじゃん、国で保障されてるからか?』

『…何が…? (オレが河童一族の家系ってバレてるのか?…)』

『その目…禁忌婚の間に生まれた子供がもって生まれる可能性がある…金の瞳は河童一族特有だしな、それに…俺の一族は昔河童狩りしてたし…。』

『……(狩られる!?)』

『ま、俺にもお前にも関係ねぇし、大体お前皿ねぇしなぁ~どっちかって言うとヤる方の好みだし。』

『はっ!? や、ヤるって…? (ま、まさかコイツ…)』

『俺、どっちでもOKだから…あぁお前は下ね♪』


「あんな出会いで先生といるオレって一体…。」

「あ? お前がこの俺に惹かれたのと、俺の腕が良いからだろ?」

「毎回深夜にフラフラしてたら拉致ったクセによく言うぜ。」

「細かいことは気にすんなよ…第一、未成年の保護だろ?」

「細かい!? アレで細かいのかよっ!! しかも保護する奴があんなコトしてって!? オレの初物返せって!!」

「あ――、ハイハイ、一生面倒見てやるからそんな怒んなよ。」

「―――――っ!!」

でも…先生に会えてオレが変われたのは事実だからいいけどな。


「ん? 何笑ってんだよ聖人。」

「え? いや、別に…。」

先生のコト考えてたなんて言えねぇ…。

「今日は家に帰るのか?」

「いや…多分平気…。」

本当は友達んとこ行くって弟たちには言ってある…。

「じゃあ、泊まってけよ…。」

「あ、うん。」

先生の所に泊まるのは3日ぶりくらいかな…。

「寝かさねぇから覚悟しとけよ。」

「あっ、ちょっと、せんせぇ…あっ…」

「まだ、イけんだろ?」

「ちょっ…せんっせ…や、ん…あーーーっ!!」


また襲われる新しい快楽の波にのまれながら先生に抱かれるオレは、きっと先生にしか見せない顔で啼いている。

そして全てを先生に預けて…。

オレは先生の腕の中で安心して眠りにつく…。

まるで怖い夢を見て親に泣きつく子供のように…。


何故って? それは…。

先生だけが、オレに道を示してくれる…。

先生だけが、オレの本音を聞いてくれる…。


翔や優も大切なダチだけど、でも何かが違う…。

何かが……。

それが何なのかは今のオレには分からないけど…。

分かった時、オレは自身を持って先生の…神の隣に立てる気がする…。



「聖人……お前は俺が守ってやるから…だから……。」


先生がオレの耳元で何かを囁いていたのを聞くことが出来ないまま、オレは先生に全てを預けて深い眠りについた…。





この時に、生の言いたいことが分かっていたら…何かが変わっていたかもしれないのをオレはまだ知らない。

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