第10話 闘いの果てに

儀式が終わると眩しいばかりの光の奔流が広がる。

黒く渦巻いていたレイスの塊はなりを潜めて拳大の大きさの黒い石が足元に転がっている。


「何とかなったかな?、あとはこの聖櫃に封印してと……」


 黙々と作業を進める。

 額に大粒の汗が滴り、頬をつたい地面に落ちる。顔色も幾分か悪いようだ。


「みんな、お待たせ!……出発前に教会から話を聴いていてね。もしかしてと思って準備をしておいたんだ……」


 そこまで喋るとウィルの視界の景色が回り始め、暗転する。

何とか踏みとどまろうとするが足に力入らず、冷たいダンジョンの地面に倒れてしまった。

 グランたちが何か叫んでる声がするが、そこでウィルは意識を手放してしまった。


〜ところ変わり、ウィル達が住む都市、某所〜


  灰色のローブを深く被った大柄な男が裏路地を歩き、人通りのないエリアにある古びれた窓がない石造り家に入って行った。

 中には先客がおり、こちらは白いローブにフードを深く被り

 黒いマスクをしている。

 中にある円卓備え付けの椅子に座わり、鋭い眼光を灰色のローブの男に向ける。

 歳の程は分からないが、かなり大柄でローブのは上からもガッチリした体格が分かる。

 灰色のローブの男が白いローブの男の前、椅子に座り喋り始める。


「言われた通り、建国前から存在する例の呪物をダンジョン内部に仕込んだせ?」

「まったく、監視は異常に厳しいし、俺じゃなきゃ入ることもままならかったぞ!」

「報酬を弾んでもらわないとな?」


 灰色のローブの男は、一気に捲し立てる。

 しかし白いローブの男は、黙って金が入った袋を無造作に机に放り投げた。

 灰色のローブの男は中を確認すると

「テメェ、どう言う了見だ?少ねえぞ!手付にもならねぇぞ!!」


 男は激昂し、掴み掛かろうとした……が

 手を掴まれ、捻られる


「テメェ、放しやがれ!……」


  男は抵抗するが、動くことは叶わない。

 そのうち骨が軋みをあげ…

 ボキッ!

 男は地面を転がり声にならない声をあげる。

 白いローブの男は、無言で右手に青い炎を作り出し

 地面に転がる男に投げ付ける

  瞬時に燃え広がり、人型の白い灰が出来上がった。


 最後に一言

「黙って受け取ればいいものを…」


 そう呟き、袋を取り瞬時に部屋から姿を消した。

 不意に扉が開き、男だった灰は風に飛ばされ散っていった。

 滅多に人が来ない為、この事件は、表に出ることなく記録に残ることなく姿を消すのだった。


〜また、場所変わり、ダンジョン〜


「ったく、昔から急に倒れるのは変わんねぁな〜」

 と毒吐く、グラン


「こうなると、2時間は起きねぇ、今うちに休憩すっぞ、野営の準備しろ!っん?道具??ほれコレで準備しろ!」

 グランは準備してきた野営セットを収納から取り出す。


「我々も準備を!念の為、魔除けの構築をして!!」


 リリア達、公爵家側もウィルの為に野営の準備を始める。

 そして王家側の裁定者達も今回のイレギュラーに対して日程の延長を決めた。


  程なく準備も終わり、焚き火を囲みグラン達は話を始める。


「それにしても闘技場破壊の罰則かと思いきや、随分ときな臭い状況だな、嬢ちゃん達?」


 フードを被って男装をし、認識阻害のプロテクトまで掛けているリリア、エリンに向かって普通に正体を把握して話しかけてきたグランに対して面を食らった2人だが、顔を見合わせ、覚悟を決めて話し始める。


「どうして?というはやめましょう。今回の呪物の件、こちらは何も聞かされていません。寧ろ私達がいるのに何故?という思いです」

 エリンは首を傾げて答える。

  彼女の性格から全て調査して臨んでいる筈、にも関わらず、知らないと言ったのだ。


「私は父と違って姑息な手段は取りません、父も単純で分かりやすいので仕掛けてないと断言出来ます」

 続いて、リリアも答えた。


「成る程、嬢ちゃん達が知らないとなると今の国は一筋縄ではないということだな。帰ってからウチのコネで調べさせて貰うとしょう」

 と両手を上げ、細かく首を左右に振るグラン


「嬢ちゃん達よ、君らが歪みあって牽制しあってる内に、ウチのアリサとウィルはかなり仲が良くなってるぞ?」

 と2人に対して禁句を軽く浴びせてくる


「「なっ!、あのメギツネ!£&@%#!!!」」

 案の定、声にならない程、激怒した。

「まぁ、熱くなるなって、ウチの道場に来いよ、コレが終わったらお前らに頼みたいことがあるんでな」

 顔色が七変化しながら話を聞いたが、2人とも渋々了承するのであった。


『まったく、2人とも奥手だね〜』


 影の中でアンリがクスッと笑うのであった。


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